あんじょーら

ローン・サバイバーのあんじょーらのネタバレレビュー・内容・結末

ローン・サバイバー(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

とても有名なマイケル・サンデル教授の「これからの『正義』の話をしよう」の中で出てくる思考実験の実例として挙げられている実話アメリカ軍ネイビー・シールズのアフガンでのレッド・ウイング作戦のたった1人の生還者であるラトレル隊員の手記「アフガン たった1人の生還」の映画化です。とても厳しい選択を迫られるわけですが、なかなか考えさせられます。


タイトルで既に完全なるネタバレなんですが、一応冒頭をお話しすると、2005年、アフガンに侵攻しているアメリカ軍のネイビー・シールズはタリバンの指導者の1人を捕獲もしくは射殺をするべくレッド・ウイング作戦を行う。その偵察部隊である先行者4名は、タリバン指導者のいる村近くまで潜入することに成功するのですが・・・というのが冒頭です。


とても有名な話しのようですし、タイトルでのネタバレ感はちょっとどうかと思うくらいですが、ある意味非常にシビアな選択を突きつけられるという意味で、考えさせられる作品です。ただ、これが現実の実話なんですよね・・・思考実験というのであればともかく、現実の世界で起こった出来事という意味でも考えさせられます。


とある選択をした結果(もういろいろあるでしょうけれど、とりあえず言葉は伏せる事にします)、偵察部隊4名の身に降りかかる現実の重さを考えますと、戦場で生きる、ということがいかに過酷な事であるか?という現実を否応なく知らされます。タイトルや映画の結果を知っているからこそ、この時の選択をどうのこうの、と考えてしまうわけですが、そもそも戦闘にならなければこういう状況にもならなかったわけですし、私の個人的な意見ですが、因果の始まりは山羊飼いとの接触では無い気がします。もっと根深いさまざまな事象の積み重ねのように感じます。


映画、としてはとてもアメリカ側からの視点で描かれる映画ではありますが、戦闘のリアルさという意味で「プライベート・ライアン」、「ブラックホーク・ダウン」、「ゼロ・ダーク・サーティ」と比しても見劣りしない傑作であると思います。特に悲惨さという意味で、現代の戦闘という意味でも、個人的には最も恐ろしかったのが「ブラックホーク・ダウン」でしたので、その戦闘シーンと同等の怖さを感じさせられました。私はあまりリアルな戦闘シーンに興味があるわけではないので、もっとリアルなものが存在するとは思いますが、この映画でもう十分です。


リアル戦闘シーンに興味のある方、スタントの方(ネタバレになりかねないので明言は避けますが、スタントの人は本当に凄いです)に興味のある方にオススメ致します。



アテンション・プリーズ!!!


ちょっとだけ、ネタバレありで書いておきたい感想がありますので、未見の方はご遠慮くださいませ。















































水辺にたどりついたラトレルが、あまりに無条件で水につかるシーン、そしてアフガニスタンの方が現れてくる方向が気になりました。ラトレルの飛び込んだ方向から現れたように見えましたので、ちょっとどうかな?と。


そして何より気になったのが、ラトレルの凄さよりも、匿ったアフガンの方の決意です。


ラトレルは帰る国があり、あくまで介入ですが、あの村はタリバンに逆らった事でこうむる被害や影響の大きさを考えると(考えないではいられない)、まさに究極の選択を行っています。この因果を考えても私はあの名もなきアフガニスタンの村人の決断こそ、もっと褒め称えられるべき行為ではないか?と思いました。


あと、突然字幕がある一瞬だけかかるのが、どうにも納得できなかったですし、なんか興醒めしましたね。そしてもう1点、タリバン側の、身を挺した攻撃の凄さを考えると、祖国を守るという行為なわけでもあって(教義や思想は全然同意できないんですが)とても感銘を受けました。装備でも能力でも上回る相手に全く怯むことなく挑む姿は、ある程度の尊敬を感じずにはいられません。