当然ながら、『ふたり』や『東京上空いらっしゃいませ』を想起する（関係性のキモさでいうと『雪の断章』なんかも）。とはいえ、EMOが爆発することもない。井口奈己監督自身は平熱な人間で、全く激情型ではない。どのカットも清潔で、なかなか見続けるのが厳しかった。『人のセックスを笑うな』で良かった部分がかなり減退して、尺の長さはそのまま。女性陣の描写は多いが、竹野内豊が裏垢男子以上の存在には見えず、、個人的にあのソフト帽やネクタイに強烈なダサさを感じてしまう。何より、女性カップルに近づくときの手つきがほんとに気持ち悪い。この箇所、今だと問題になりそうな描写だな。男性・女性での性欲のあり方は非対称なのでテーマとして扱う意義はあるだろうけど、安易に女性と猫を重ね合わせた描写はかなり厳しい。ニシノユキヒコはなんの趣味もなくて暇だからこんなことやってる男のように見えてしまう、というか実際そうだろうし。（チェット・ベイカーを例に出すまでもなく）ニシノユキヒコをほんとに最低の人間として描いていたなら魅力を感じることもあったかもしれない。しかしその踏ん切りもついていないように見える。監督はニシノユキヒコに興味ないでしょ。阿川佐和子が阿川佐和子すぎて笑った（オードリーのANNでの名作、阿川佐和子からの手紙を思い出す）。
