風来坊

春を背負っての風来坊のレビュー・感想・評価

春を背負って(2014年製作の映画)
1.5
名カメラマン木村大作の監督第2作目。
都会で暮らしていた青年が、亡き父が経営していた山小屋を継いで山小屋を営みながら様々な人達と出合い困難と向き合いながら人間的に成長していくドラマ。

原作は警察小説が主体だが山岳小説でも定評のある笹本稜平の小説。
私は原作のファンで非常に期待していましたがこれは残念というほかないですね…

何もかも原作通りにしろとは言わない。むしろストーリーはどんなに変えても良いと個人的には思ってます。
ただ絶対変えてほしくないのは主人公達のキャラクターとバックグラウンドなんですが、この映画ではそれをほぼ全て改悪しています。
主人公達のキャラクターが春を背負ってのキーポイントなのに。

原作ではヒロインとなる美由紀は登場しないし、ゴロさんはホームレスじゃないし、主人公もこんなに明るいキャラクターじゃないし元証券マンでもない。
ついでに母親ももっと飄々としたキャラクターなのに。


今作のヒロインは底抜けに明るくケラケラ笑う。原作の美由紀とは雰囲気が違い台無し。
原作のある事件があって主人公達に助けられ人間的に成長していくヒロインの話しもなく残念。

ストーリーも春を背負ってらしくない。全体的に古臭くなってしまっていて音楽も古臭く場面に合っておらず気分が乗りません。
台詞も説教臭くてちょっと引きます。
掘り下げなければいけないところを掘り下げず、掘り下げなくてもいいところを掘り下げていて無駄が多いのも気になります。

キャスティングも原作のイメージと違い残念。
まず主人公役が松山ケンイチさんは違うな…不器用であんまりコミュニケーションが上手くないというのが私の原作のイメージなので。誰かを上げるとしたら松田龍平さんがしっくりくると思う。
ゴロさんも豊川悦司さんではイメージが違いすぎる…もっと浮世離れした飄々とした感じの人物像なので。
演技は皆さん上手でしたが…

名カメラマンだけに映像だけは非常に綺麗。
山の美しさと厳しさの両面を上手く描写出来てると思います。
やっぱり木村大作さんは名カメラマンなんだなと思います。

原作の春の山のようなさわやかな感じの人間ドラマがが全然表現されてなく非常に残念でがっかりした映画でした。
原作を知らなければそれなりに楽しめるのかも知れません。
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