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GODZILLA ゴジラのFMLのレビュー・感想・評価

GODZILLA ゴジラ(2014年製作の映画)
4.0
"モンスターヴァース"の記念すべき一作目にして、ゴジラが全く出てこないゴジラ映画

"出てくるのが遅い"ではなく、"出てこない"
むしろ、もうひとりの怪獣"ムートー"のほうが出てくる
ムートーは、めっちゃ出る。
タイトル"ムートー"にしたほうがいいやろってぐらい出る。

ムートーはこの映画のオリジナルヴィランらしく、系統的には虫タイプやねんけど、程よく怪獣っぽさとのバランスが取れてて迫力もあるし、なかなか悪くない

で、ゴジラの出てこなさやねんけど、もちろん理由というか目的がちゃんとあって、とことんリアルさを追求した結果やと思う
監督や製作陣は相当な覚悟でこの映画を作ったはず
「ゴジラ映画やのになんでゴジラ出てけえへんねん」って批判が殺到するのはわかりきってたはずやからな
実際、FilmarksやYahoo!映画見ててもそれが理由で低評価をつけてる人がかなりの数いた

自分も観る前は、ゴジラが暴れまくるコテコテモンスターパニック映画を期待してたのは事実やねんけど、このリアルさは──
例えば、ムートーの目的ひとつとっても、あくまでムートーは"繁殖のために街を移動してるだけ"であって、人々や建造物を破壊する気など全くない
ただあまりにもデカすぎて人類の脅威に"なってしまう"だけ
街中にそれこそクマとかサルが出ただけでパニックになるのに、ビルよりでかい怪獣が市街地を飛び回ってたら、そりゃ駆除されるやろっていう
つまり、ゴジラはおろか、ヴィランという扱いのムートーですら必要のない破壊は全くしないというところ

そして街の人々の怪獣をテレビや実際に見たときの反応もリアルで、よくあるパニック映画は必要以上にみんなが叫んで騒いで混乱するっていう描写が多いけど、この映画はそうじゃなくて
まぁ、そんなもんよなっていう
実際怪獣が街中に現れても、たぶん人々ってそんなに大騒ぎせえへんやろうなっていう妙な現実味があって
それこそ、子供たちなんか騒ぐどころかぼーっと見つめながら「怪獣かっけー」ぐらいの感じで笑

次作"キングコング:髑髏島の巨神"と比較するとわかりやすいけど、キングコングは今作とは逆に人間ドラマをとことん排除して怪獣たちのバトルをメインに描いてたことを考えると、意図的に対照的に製作したというのは明白で
ストーリー重視のゴジラ、バトル重視のコング
そしてその両者がぶつかり合うさらなる次回作への布石というのが、この映画の正しい見方なんやろうなと

後半、ムートーが自分達の卵を燃やされて泣き叫ぶところなんか、人間は自分達を守るために戦うのは当然やし、ムートーからすれば繁殖して仲間を増やすのは生物として当然の行為で、というどちらが悪いとかではない生々しさすら感じるほどの描写

それだけリアルに展開してきたからこそ、この作品の最後の最後でゴジラがあの青い光線を吐くシーンの興奮はものすごいものがあった
極めて現実的に進んできた映画が急に非現実的になるあの瞬間
だってあんなクソでかい怪獣が口から光線吐くとかありえへんやろ
しかもご丁寧にムートーの口思っきしこじ開けて口ん中に光線ぶち込んでたからな
殺す気満々やろ確実に

"こういうのでいいんだよ"を裏切って、"こういうのもいいかもな"というレベルにまで押し上げたこの作品の功績はあまりにも大きい

とにかくこの映画を観る前に頭に叩き込んでほしいこと
"ゴジラがマジで出てこない"
これさえ覚えておけば、絶対楽しめる作品であることは間違いないよ

たぶん。
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