ぽかぽか

指輪をはめたいのぽかぽかのレビュー・感想・評価

指輪をはめたい(2011年製作の映画)
5.0
めちゃめちゃ感動した。映画って人生だし、人生って恋だし、その3つが=で結ばれる感覚。目的があるのは分かっててとりあえずそれに向かって全力疾走するんだけど目的の対象は判然としてないという素晴らしいプロット。『指輪をはめたい』という目的・欲求を表すタイトルもGood。

・切実に、誠実に、真剣な滑稽さから滲み出るユーモアをギリギリのバランスでやってるので大半の観客はどう観ていいか分からないと思う。その監督の傲慢さというか、シネフィルのエゴみたいな姿勢態度にも完全に同意・共感できる。

・小西真奈美が建物の向かいの棟を見て、上の階に看板を運ぶ会社の同僚たち、下の階に山田孝之が映るショットとか、女性3人が鉢合わせて揉み合いになるシーンの切実さとか感動。

・最初のスケートリンクを滑る二階堂ふみとそれを外から並走して追いかける山田孝之の構図が終盤で反転したり、窓の外から見ていたカフェも終盤で構図の反転で店内からのカメラになる。
山田孝之が3人の女から逃げるのも窓だし、窓の映画。

・序盤で遠くのおじさんに声掛けて無視される、スケートリンクの中にいる二階堂ふみに向かって缶を投げまくる、結婚を祝福する同僚たちに囲まれるかまいたち山内に呼びかける、それらのコミュニケーションに使う気力だとか必死さのエネルギーにグッとくる。

・終盤、暗くなったスケートリンク上で3人の女性との思い出が同画面内に映し出されるショットで、ああ、岩田ユキは映画を信じきっている…と思うと同時にこの瞬間だけでこの映画はperfectなんだという確信めいた感動が押し寄せてくる。

・ラスト、二階堂ふみの憂いや哀切を帯びた少し演技臭さもある絶妙な表情と、背景で揺れる白いカーテン、山田孝之との切り返し、反復されてきたセリフが結実する瞬間の、なんともいえない充足感と多幸感、ああこれこそが映画だと力無く呟くしかない完璧さ。

「なんのために絆創膏持ってんの?」「思いっきり転ぶためでしょ」
ぽかぽか

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