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チョコレートドーナツのuriのレビュー・感想・評価

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)
5.0
話題になった時に観る時間が取れず、
今更ながら鑑賞。

同性愛者とダウン症の少年という悲しくも社会的立場の低いアイデンティティを持つ、インターセクショナリティーにある人々の話。
彼らの真に眠っている正義や人間性に関係無く、マイノリティであるというだけで否定されてしまう。今でこそSNSの発達、社会運動の広がりによりLGBTQ及び知的障害を持つ者が少しずつ理解されつつあるが、つい近年までは彼らが社会の片隅で本当の自分を隠し細々と生きていかなくてはならない世界があったということを痛感。

Wikipediaには「『1970年代のニューヨークのブルックリンでゲイの男性が育児放棄された障害児を育てた』という実話に着想を得て製作された映画である。」と記載があるが、本作品では(物語としてのストーリー性を強める為だろうか)ハッピーエンドなお話が好きなマルコが家を捜し歩いた末に独り亡くなるという無念にも皮肉なほど悲しい最後を迎える。予想外のエンディングに思わず涙が溢れてしまった。

出逢って数日で同棲、元隣人の少年を引き取り育て始める。その後も目にも止まらぬ速さでストーリー展開がなされており、現実的に有り得ないと考える視聴者も多いだろうが、映画の全体的なまとまりとしては飽きさせない構成で私自身はとても好感を得た。

余談だが、原題の「Any Day Now」が意味を持つ一方で、邦題の「チョコレートドーナツ」は作品の中身を考えると不穏当ではないかと感じた。
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