にいにい

フルートベール駅でのにいにいのレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
4.0
2009年1月1日、フルートベール駅で22歳の黒人男性が白人警官に射殺され、大きな反響を生んだ。そんな実際に起きた事件を基に作られた本作。

自分はこの事件に関して詳しく知らなかった。そういうことがアメリカで起こり続けることは何となく知ってたけど、事件の詳細やらその後の社会運動などは恥ずかしながら知らず。そんな自分にとってこの映画は色々考える良いきっかけになった。

1つの映画として本作をみるとまず構成が上手いなと思う。冒頭部分に実際のフルートベール駅で起きた悲劇を携帯の画質の悪いカメラで撮った映像を使っている。その後にその前日大晦日のオスカーの1日を追う構成になっているが、先にこの映像が使われることで死ぬ前の日のオスカーの1日の一挙一動に惹きつけられ、何気ない1日がとても儚く愛おしく感じられる。この順番が逆だとその先に待ち受ける悲劇を知っていたとしてもここまでのものは感じられなかっただろう。
後はオスカーの1日の中で何気なく映り込む電車のシーンと仲間達と駅の改札を抜けた後、何もない改札を取り続けたシーンも印象的。これから遂に起こってしまうんだなと身構えてしまった。

主人公のオスカーは決して褒められた人間じゃないけど、更生しようと一歩を踏み出そうとしていた。例えどんな人間であれ、自分の人生を他人に奪われる権利はないはず。人種差別という問題以前に人生が呆気なく終わることに対するやりきれなさと儚さを強く感じた。ここで殺されたのが黒人だったということが事態を更に複雑にしたのだろう。人種差別について語る言葉は持たないけど、決して無くなることはないのだろうな。

主役のマイケル・B・ジョーダンは『クロニクル』に引き続き良かったな。それと同じくらい母親役のオクタヴィア・スペンサーの演技に惹き込まれた。

知らないで生きるのと知って生きるのでは意味が違う気がする。観て良かったです。
にいにい

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