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フルートベール駅でのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

フルートベール駅で(2013年製作の映画)
3.9
現在はハリウッドでもブロックバスター作品を手掛ける、新鋭監督ライアン・クーグラー監督の長編1作目。
この作品は、2014年サンダンス映画祭でグランプリを受賞した最高のデビュー作。


映画というのは人を動かす。心を動かすという意味でもそうですが、その心が動いてから行動に移させるほどの力を持ってると私は思います。

この作品なんかもそう。ニュースで連日取り上げられた2009年1月1日の事件ですが、この事実を来世に残すという意味、そしてもっと多くの人に知ってほしいという意味でこの映画は人を動かしたと思います。
個人的にいうと、この映画を観た後には、映画を作らなければならない。という気持ちに駆られました。それほどまでにパワーのある作品。

16mmフィルムで撮影された本作には、日常を表す表現がたくさんありました。
まず16mmフィルムというフォーマット。現在多くの作品が35mmフィルムやデジタルフォーマット、65mmで撮影しているところを、デビュー作ということで低予算映画ということを逆手に取り、16mmで撮影することにより、少し解像度の落ちたフィルムのグレインを感じる映像を実現していました。それは、我々が馴染みのある8mmの家庭用ムービーに似たような、日常を感じさせるテイストを観客に与えます。

そして、ハンドヘルドでの撮影。ワイドレンズを使い、常にキャラクターの近くにカメラを置くことで、観客がその家庭だったり、コミュニティだったりに一緒にいるような感覚を感じ取ることができます。それが、キャラクターを描く一つの方法にもなっており、観客が一つのキャラクターになるというような、映画の世界の中に視点を置くテクニックをつかっていました。

そして、編集もまたハンドヘルドのリズムと、家族の中の会話、キャラクターの感情などを編集へのリズムに反映させ、ワイドのエスタブリッシュショットでリズムを落としたり、サスペンス的要素を視覚的に表現するようなカットの粘りがありました。ほとんど無駄のない編集と、編集でストーリーに縦軸をもたらすテクニックは見事だったんじゃないかなと思います。

このように、すべてが一流のタレントをもった人が作り上げたわけではないけど、それらが一貫性を持っており、相互に編み込まれているからこそ、大きな感情を生み出すことができ、観客を動かすことができるのだと思います。
結局は映画もアートであり、何を伝えたいのかということが明確であり、そこを軸にどこまで観客を参加させられるかということが重要であるということがこの作品からよくわかりました。

軸がぶれたり、細かったり、ましてや軸がなかったりする映画はどんだけタレントを持った人々が作ったとしても観客を動かすことはできない。たとえ、観客を楽しませることができたとしても。

映画はそれだけの力を持っているのだから、それだけの力を持たせてあげるのがフィルメーカーの役割であり、義務であると私は思いますし、私はそれを作り上げたい。
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