七色星団

プリズナーズの七色星団のレビュー・感想・評価

プリズナーズ(2013年製作の映画)
3.8
失踪した幼い娘の行方を追う父親の、内なる善と悪の戦い。

冒頭から聖書?の引用もそうだし、宗教的な暗喩をスルーしちゃうと芯を食った楽しみ方は難しくて、僕にはその素養が無かったみたい。でも、それはあくまでも更に深い所まで読み解こうとするならば、ということであって、宗教的な部分をスルーしたからって作品の魅力が損なわれるわけではないので。

娘を思う余りの家族の苦悩と、痛々しさまで伝わる主人公ケラーの行動にハラハラが止まらず、全編通して緊迫感に押し潰されそうになるほどの重厚なサスペンス。最後の最後まで結末が読めず、ここで幕かと思ったらのもうひと捻り。

なんとも言えない余韻を残す映画。

それにつけても失踪した娘の父を演じるヒュー・ジャックマンですよ。
何があっても即座に対応出来るよう”常に備えよ”が心情で、実に頼りがいのあるナイスガイなパパ、ヒュー・ジャックマン=ケラーが、娘の失踪から自分の無力さに憤り、時に怒り、慟哭する、その演技の深みに圧倒され、数多ある子供失踪サスペンス物から頭一つ、いや頭二つ抜けた作品にしたと言っても過言じゃないと思う。

そして、ケラーの友人の娘も同時に失踪していたのだけど、無茶を始めるケリーの行動について行けず、
「やっちゃダメなやつだけど、これしか方法がないのも事実で、でも怖くて俺は手は汚せないし…。」
という、非難をすれどもケリーを止めない友人フランクリン夫婦もまた、自分の中途半端な対応に葛藤し苦しむ姿に胸が苦しくてねぇ。
観る者の心を終始えぐってくる作品だったなぁ。

犯人、もしくは犯人への手掛かりを持つという疑いから文字通り監禁されたアレックス。
息子を病で失ったショックで信仰心を無くした夫婦。
神父。
そして娘のために神と悪魔を隔てる細い道をフラフラと歩くケラー。

登場人物は全て何かに囚われて行動を起こした者ばかり。
そうかプリズナーではなくプリズナーズか。
七色星団

七色星団