七色星団

コット、はじまりの夏の七色星団のレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
3.9
孤独で恵まれなさ過ぎて、感情を殺して何も感じないように努めてるようにも見えるコット。
学校に居場所は無いし、お姉ちゃん達も妙によそよそしい。その上に父親が絵に描いたような清々しいほどのクズ男。
唯一母親だけがコットのことを気に掛けてるくらいだけど、子沢山ゆえにコットにまで十分な愛情を注ぐ余裕なし。コット、八方塞がり!

ところが、家の事情から預けられることとなった親類の家でコットの生活は一変。
最初こそ自分が今まで与えられてこなかった、"普通の子ども"として年相応の扱いにどう振る舞って良いのかも分からず戸惑うコットだけど、新しい事を学びながら解けていく彼女の心を急がず、丁寧に描いていく。
やはり子供には子供として普通に過ごせる時間と場所が大事だから、一つだけでも良いので自分らしくいられる心の逃げ場が無いとね。

その逃げ場となったのがアイリン&ショーン夫妻の家。
この夫妻には悲しい過去があるのたけど、妻のアイリンはどこまでも優しい。お姫様のように扱うのではなく、一人の人間としてコットに接し多くの学びを与える。そして夫ショーンは生来の不器用さもあってコットへの向き合い方が笑っちゃうくらいヘタクソ。ここもショーンがコットへと寄り添っていく経過をゆっくりと丁寧に描いており微笑ましい。
もうね、あのクッキー一つ、そっと置く前後のくだりが良い。良すぎる!
そこからの二人の関係は一定の距離を置きつつもベタベタにはならず、抑制の効いた演出になってるのがまた良い。
映画のラスト、あの状況におけるコットが二度発したあの言葉がね、一際に沁みるんだよねぇ。
まさかアイリンではなく、ショーンがフィーチャーされるとは笑

それと撮影がメチャクチャ良かった。自分の視力が上がったのかと勘違いするほど画面の隅々までクッキリハッキリと見せるけど、バッキバキの解像度という訳でもなく、光の取り入れ方かな?あくまでも優しい画。
その一方で、コットが夫妻の家に預けられた序盤、カメラの被写界深度を浅めにとったカットやシンメトリー構図を多用したカットが多く、整えられた安定感・安心感と、それまでの雑然としたリアリティの中で過ごしていたコットにとって、まるで寓話の中で過ごしているような感覚を表現してるようで素晴らしかったなー。

自分の意志をハッキリと示せるまでに成長したコットの物語。
ポスター見るだけでグッとくるやん。
また観たい。
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