H4Y4T0

シンプル・シモンのH4Y4T0のレビュー・感想・評価

シンプル・シモン(2010年製作の映画)
4.0
『スウェーデン発、観た人が100%幸せになれるハートフル・ラブコメディ』
そのキャッチコピーに恥じぬ完成度の高さ。”SF映画が好き”で“ラブコメが嫌い”な方でもきっと好きになる感動作。

アスペルガー症候群を抱える主人公シモンは何をするにしても決まって「シンプル」。他人と関わることが大の苦手。
マイペースというよりは、規則正しい生活のリズムが乱れると“混乱”が生じてしまう為、何時も一人ぼっち。
そんな彼を心配ながらも大切に想う優しい兄サム。
彼らを取り巻く人々との接触によって徐々に深まっていく絆を、ユーモアを凝らした工夫で非常にポジティブな物語へと描かれている。

ヨーロッパ映画特有のカラフルでポップな色使いやざっくりとした脚本は相変わらず大胆不敵。一方で小道具・大道具を含む美術面や、シモンを筆頭に性格・タイプの異なる個性豊かな登場人物達のキャラ設定等、至る所で芸の細さが見て取れる。
見ているだけで楽しい気分に浸れるアートワークは本作中、一番の目玉と言っても過言ではない。

当初はスウェーデン映画とはいかがなものかと半信半疑だったが、予想を遥かに上回り、今までの常識が見事に覆された。
当たり前だと思うことが“常識”なのではない。この作品に隠されたメッセージに、思わずハッと気付かされる。
普通であることがつまらないのではなく、普通だと思うことが異常なのだと。

言わずもがな「アスペルガー症候群」は一種の発達障害だ。外見から判別することは困難で、話し方や行動パターンも人それぞれでよく誤解され“がち”。
だがシモンのように感情を押し殺す術を心得ておらず、単に表現の仕方が不器用なだけの「真人間」を無意識に遠ざける腐った世の中の方がよっぽど近寄り難いと自分は思う。
イェニファーにはそれが理解できたし、同時に自ら歩み寄ることでシモンの心を開いて見せた。
彼女の天真爛漫な性格やサムの気まぐれな優しさは、お互いを理解しようとするうえで非常に大切なものであって、絆をより深める必然的なもの。
ラストは胸キュン必至、男だったら1発で落ちること請け合い。
女性の皆様は是非参考にしてみるとよろし。
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