なっとうオムレツ

インサイド・ヘッドのなっとうオムレツのレビュー・感想・評価

インサイド・ヘッド(2015年製作の映画)
4.3
とある少女が家族と引っ越しをする、ただそれだけの話。
ただそれだけの話ではあるんだけど、キャラクターの感情に焦点を当てた作品だから、物語が「出来事」に依存してなくて、出来事の起伏以上に見応えがある。
子供が抱く感情の機微を丁寧に汲み取ってるのも好きー。

普通、物語では感情を直接的な言葉にせずに描くことで深みのある感情表現が目指されるのに、逆に感情をぜーーんぶ表現しちゃうことで感情表現に奥行きが出てるのが面白い。

感情のコンフリクトとか、ふつうに子供には分むずい概念だと思うけど、それをわかりやすく、比較的適切に表現できてるから、この感情を擬人化するっていうフォーマットはすごい。

事象を受けて記憶が生まれ、そこに感情の色がつくっていうのは唯識論的っぽいし、経験が人格を形成するっていうのは経験論っぽい。色々整理したら哲学史の導入として良い資料になりそう

無理にポジティブでいようとせずに、悲しいときは悲しもうね、とか、あまりに抽象的な思考ばかりしてるとしんどくなるよ、とか、割と生き方の示唆に富んでる。
友達いなすぎて一人で飯食ってるとき、夢想と抽象で一人遊びしちゃうのリアルすぎるよぅ…

本作にて登場する感情は喜び(ヨロコビ)、悲しみ(かカナシミ)、怒り(イカリ)、臆病(ビビリ)、不快(ムカムカ)だけど、もしこの作品を日本でつくってたらこの4つにはなってないだろうなあ、国によって感情の分け方が違うんだろうな。
それはそうとしてムカムカちゃんかわいいよぺろぺろ

ヨロコビちゃんがするカナシミちゃんへのあしらい方が中学生陽キャ女子のそれで、なんかうわーーー!!ってなった笑
見え方が悪くならないようそつなくハブるのよね…

作品の最後に両親の感情が登場したり(途中もあったけど)、主人公がこのあと思春期を迎えることが暗示されてたり、「このあとどうなるんだろう!」っていう広がりを持ったワクワクで作品を見終わることができるから、視聴後が気持ちいい〜

感情を擬人化するっていうフォーマットは色んなとこに応用が効きそう。本作品の別キャラクターを描くスピンオフもたくさん作れそうだし、他作品版(例えば、ズートピアのあのシーンでのあのキャラの感情は…?とか)も見たくなる。何度も言うけど、めちゃいいフォーマット〜!