「ストーリーがない」「人間の歴史が詰まっている」「砂漠を行って戻るだけ」「緻密」「フェミニズムだ」「男の映画だ」というバラバラな前評判が耳に入ってきていたので、これは果たしてどんな映画なんだと思って観に行ったら納得しました。どれも正しかった。凄まじい映像を浴びるように観るだけでも愉しめるし、ちょっとしたことからその背景にあるものを読み取ることもできるように作られていました。
観るたびに違うところに注目できそうな気がしますが、一度だけ観た時点で個人的にとても印象的だったのは、やはりフュリオサがイモータン・ジョーに向かって「私を憶えてる？」と言う場面でした。フュリオサが片手を失った理由や反旗を翻した経緯については、明確にこれこれこうなりましたよという説明はないわけですが、膨大なバックグラウンドストーリーの存在を感じさせるシャーリーズ・セロンの表情の演技は素晴らしいなあと。ドラマシリーズとかだと長々とフラッシュバックが挿入されてスピンアウトのエピソードも生まれていきそうなところを、かなり削ぎ落としているため（しいて言えばマックスの脳裏に染みついてフラッシュバックする救えなかった人たちの幻影が現れるくらいでしょうか）、感情移入の余地が色々ありました。またすぐ観たくなる素晴らしい映画でした。
ただ一つだけ悔しかったのが、これを4DXで体験できなかったこと……。色んな方式で観てみたかった。
