TinuHayase

思い出のマーニーのTinuHayaseのネタバレレビュー・内容・結末

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「せんせー、ぼくはおんなのことおんなのこがくっつくのがいいとおもいます!」

映像が美しく、心地よい音楽があるだけ、身勝手でうじうじした主人公も無駄に煙に巻こうとするストーリーも面白くない。そんな感想をよく見る。僕の家族も同じような感想だった。
そこまでひどいとは思われないし、思春期の少女の傷つきやすい自尊心や自意識の暴走をそれなりに上手く見せてくれていると思う。はっきりとは拾われないが、気づくとはっとする伏線もかなりあって細かい気配りのある映画である。特に花売りの格好をした杏奈が大人たちの金を突き出す手に囲まれて逃げ出すシーンはとても怖くてとても好きだ。ただ映画の長さの問題もあって、杏奈の経験が意識の変革や気づきにつながっていく様子がどうしても手っ取り早く感じられてしまう。のろくて退屈とかいう人は無視して、彼女の心情変化や現在の家族との関係をもう少し丹念に描いて欲しかった。ミステリー的な面白さは多少犠牲にしても、見終わったときの観客の納得感に重きをおくべきだったような気もする。

と、普通の見方はここまでである。百合紳士としては杏奈とマーニーの悲恋としてしゃぶりつくす所存である。女の子が女の子に恋をして甘酸っぱくキャッキャウフフして、でもそんな蜜月は長くは続かなくて、実は片方はノンケであったことが発覚し、フラれた方は「それでも貴女が好きと涙ながらに愛を叫ぶ」のである。劇場で観たときは血と蜂蜜の混合物を吐いた。
「アアアアアアアア、女の子同士の恋愛素晴らしいんじゃあ……心がぴょんぴょんするぅ」しかも片方がノンケ、しかし悲恋であっても二人のお互いを想う心は永遠である。
百合紳士としての観点だけから判定するなら★4.2辺りまでつけてしまう。
僕が観るたびに血涙を流す名シーンをお教えしよう。記憶任せなので台詞は若干適当かもしれない。
マーニー「杏奈、女の子の中で貴女が一番好きよ」
杏奈「マーニー、誰よりも貴女が好き!」
こうして美少女二人が抱き合うのである。最高に萌えるが、この時点で二人の好きが決定的に食い違っていることが示されるのである。
マーニーは女の子の中では一番杏奈が好きで、実は愛する男がいる。ノンケである。対して杏奈はガチレズで、マーニーを愛している。
もうこのすれ違いだけでご飯何杯でも食べられますよ、ええ。
こうしたシーンの解釈は八割方が僕の妄想の賜物である。しかし、よく考えてみて欲しい。「風立ちぬ」であからさまなように(あれはあからさま過ぎるけど)、本来ジブリ映画とはパヤオの妄想を垂れ流すものであったはずだ(それだけじゃないけどさ!)。米林監督はその点においてジブリの後継者足りえていると僕は勝手に応援している。
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