クマヒロ

思い出のマーニーのクマヒロのレビュー・感想・評価

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
3.6
『背中を押してくれるのはいつだって』

素直になれず、周りと溶け込めない女の子が一歩踏み出す。繊細な思春期の少女の機微が見事に描かれた本作『思い出のマーニー』

「メェメェうるさいヤギみたい」アンナが親同然の頼子に対して放つとんでもないセリフから始まる本作。不安定な思春期の少女の成長を本人に寄り添っても、また親心を持って観ることもできる。
彼女の変化を『借りぐらしのアリエッテイ』の米林宏昌監督ならではの繊細なアニメーションで捉え、ラストにアンナは外側内側の区別をなくし、頼子を許すことで一歩大人になっていく。

その頼子を変えるマーニーがなんとも魅力的。リアリティから逸脱したマーニーの存在は、現実世界を嫌だと感じるアンナにとって逃げ場になり得る。思春期の自分に寄り添ってくれる存在であり、殻のような役目を果たしている存在とも思える。
そして、彼女の存在こそがアンナの成長にそっと背中を押してくれる。

マーニーが誰だったのかということを考えると、背中を押してくれる存在はいつだって近くにいるかもしれないと思わされる。周囲と折り合いがつけられない人にとって、この作品こそが優しく寄り添ってくれるものになるに違いない。
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