もとまち

(秘)色情めす市場のもとまちのレビュー・感想・評価

(秘)色情めす市場(1974年製作の映画)
3.9
大阪下町底辺地獄。
真夏のうだるような暑さの中で、その日暮らしの日々を送るどん底人間たち。売春婦の母と娘。知的障がいを持つ弟。恋人に売春させる男。揃いも揃って救いようのない人ばかりである。彼らには「こんな生活から抜け出そう」なんて意志がほとんどなく、それこそ劇中に登場するダッチワイフのように、空っぽなまま毎日を生きているだけなのだ。陽炎でぼやーっと揺らめく真昼の町で、虚無的にダラダラと生きる彼らの姿が生々しい。
モノクロ&手持ちのゲリラ撮影で捉えられた当時の西成の風景も、肌感覚で感じられるほどのリアリティ。それがより一層本作の憂鬱な世界観を高めることに成功している。
母親の流産を目撃して、「私もあんなんやったんや......」とトメがつぶやくシーンが強烈。その後の表情のアップ。彼女のあの表情、あの眼差しが、目に焼き付いて離れない。
終盤、唐突な太陽のアップと共にカラーに移るシーンも印象的。通天閣のてっぺんに行くシーンもスリリングでゾッとしたが、展望台からニワトリを吊るし、そのまま自分自身の首も吊ってしまった弟は、いったい何を思っていたのだろうか。
ラスト、ダッチワイフとして生きることを決めたトメの開き直りっぷりはどう取ればいいのか。まあ、救いなんてあるはずもないんだけどさ。
もとまち

もとまち