JIZE

寫眞館のJIZEのレビュー・感想・評価

寫眞館(2013年製作の映画)
3.3
大正ロマンの古き讃美な面影!!ショパン楽曲の滑らかなピアノ旋律が至高!!全編18分間のチャーミングで人情味奏でる歴史的な産物映画!!先に,全体像の結論を述べれば同じアニメ映画である細田監督の近作『バケモノの子』ほど絵的に笑え痛快な作品ではない。が,内容不在な凡作でもなく観終わり密な異化効果が全編に染み渡りこういうイノセントな映像の無垢な流れに身を任せ尚且つキャラが独り歩きせずな哀愁染みる佳作を待ち望んでたんだ!と感慨深き後味。好みな方はズバ抜け作品世界に浸れる生涯に残る映画体験の1本だと思う。世界観の造形はジブリと日本昔ばなしを足し割る古風だが表情や背景の快活的な現今が入り乱れ現代咀嚼する感覚。時代背景も明治,大正,昭和と1人の写真家と婦人の愛娘との運命的な交流を長らかに描き込み激動の時代変遷に乗せ映し出す淡いノスタルジックさ満載な男女の恋物語。短編アニメーションでは最近観た中で無類の感動作品。全編で台詞が一切発せず効果音1本で全てを体現し生涯の終焉に向け導く為か旧式カメラのフラッシュ音,お手玉を叩くナチュラル音,人物表情とピアノ伴奏の緩急をデフォルメする入念なメタ演出など些細な動作の揺れ動きがズシッときめ細かく身体中に響き渡る..物静かだけどのし掛かる重さの鋭さ..この演出には本気でシビれた。劇中で唸る箇所も好みな題材なだけにやはり多い。ユーモアな写真家が仏教面な愛娘を笑わす為,必死の形相で笑みを引き出そうと内面はもがき苦しむも持ち前の明るい資質で愛娘の(笑いの)ツボを懸命に引き出す努力家な写真家と冷淡な眼差しで潤に眺める割と現代風な愛娘..サイレント演出を施す作品なだけに両者の温度差or背景を通じた内側と外側の対比が秀逸に効きこの作品自体を監視する観客が抱く心の奥底(想い)をレンズ越しに写真家が覗いてるんじゃと穿った錯覚に陥る奇妙な感覚..(褒めてます)戦前を舞台に激動的な時代背景をクローズアップし写真家と愛娘の揺れ動く繊細な連なりを生涯を通じ儚く映し出す..監視後に間違い無く心が清く浄化され今を生きる大切さを実感させる栄誉ある作品。ムスッとした愛娘を笑顔で多幸感に包ませる"伝える歓び"や"伝わる想い"の生涯通じる概念的な趣。本作は短編『陽なたのアオシグレ』と2本立て上映で映画化されたみたいで昨今サイレントアニメとしても評価されるべき健全な作品なんじゃと思いました。製作スタジオもなんと2日前に扱い渋々酷評した『台風のノルダ』と同じスタジオみたいで正直別の意図で驚く始末。同じ短編映画でここまで違うかと..悲哀が浮き出るノスタルジック感は勿論,台詞無しのショパン楽曲に乗せ当時の移り沈む時代変遷の歴史的な堪能を,お勧めです。
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