平久保百年子

狂った果実の平久保百年子のレビュー・感想・評価

狂った果実(1981年製作の映画)
3.0
良い意味で変な映画。70年代終盤の、80年代に入りかけの日本の雰囲気が匂うように描かれていてそこが好きだなーっていうか。

主人公の哲夫くんはイケテナイ童貞みたいな役どころだけど、今の時代感覚で見ると鮮魚店で生きた鯉を買ってきて自分で捌いて「鯉こく」作れるんですからね!それだけでもポイント高いですよ。今なら合コンで一番人気ですよ。
実家は神社という氏育ちもさることながら、祝言の祝詞を全部暗記してるとか頭いいし!
何より昼夜働いて、家に仕送りしてるとか素晴らしい孝行息子。

千加のボーイフレンドたちは「金持ちのボンボン」みたいな役どころなんだろうけど、伸びっぱなしのヘアスタイルとか、いかにも安物な服を着てて「昔のアニヲタ」みたいで不細工ばっかなのが可笑しかった。
シンプルな白シャツとジャケット、デニムのパンツでコーデしている哲夫くんの方がよっぽどオシャレに見える。

田舎の純朴な青年や、都会のどん底に蠢く虫のような人たちを、都会のスレたボンクラどもが面白半分に破壊する救いの無いお話。
しかしまた一方で、都会のスレたボンクラ娘の千加もまた、汚れた大人に汚されていくだけのダメで無力な存在のまま破壊されて。

なんか可哀想すぎるよ。これで罪を犯さない人がいたら教えてよ!

執行猶予って、哲夫くんみたいな人のためにあるんだなと深く実感した一作。