にいにい

8月の家族たちのにいにいのレビュー・感想・評価

8月の家族たち(2013年製作の映画)
4.0
家族ってこんなものだよな。程度の差こそあれ、どんな家族にもあらゆる歪みがあるはず。長年蓄積されたその歪みは衝撃に耐えきれずある時崩壊する。

失踪した父の家に久々に家族が集結する。そこに待ち構えているのは誰よりも"強い"母、バイオレット。癌を患いドラッグ漬けの彼女が語るのは常に真実。遠慮なく繰り出す口撃に同じ血を受け継ぐ家族もズタズタとなる。

若い女の子と浮気した夫と別居中かつ反抗期真っ只中の娘との問題を抱える長女バーバラ。三姉妹で唯一、父母の近くで暮らし取り残された感のある次女アイビー。いかにも三女といった言動と若作りした脳内スイーツ三女カレン。この三姉妹とそれぞれの夫、婚約者、娘、叔母、叔父、従兄弟を交えた大家族喧嘩。

取り残された母の元に集まるやいなやすぐに始まる口論。しかしそんな口論もただのジャブの打ち合いだったことに後で気付かされる。父の葬式後、食卓に皆が揃うシーンこそ本作最大の見所。最後に席についたバイオレットの第一声「男性は皆上着を脱いでるけどお葬式の会食の席よ。闘鶏場じゃないのよ」さあ、闘いのゴングが鳴り響いた。

チャーリー叔父さんの締まらないお祈り中に鳴り響く間抜けな着信音。気まずくなると話を替えるところや、若さ溢れるジェーンを小馬鹿にする腹立つ感じ、誰もが経験したことだろう。ここまで酷いものにはならないだろうが、人間が生まれた時から属する社会的集合体である家族を描いている本作はそれでも普遍的である。

メリル・ストリープもジュリア・ロバーツも正直嫌いな部類に入るが本作は素晴らしかった。このメリル・ストリープには勝てる気がしない。脆さを感じさせながらそれでも誰よりも強いバイオレット、ウィッグを外している時と家族の前で付けている時の雰囲気の違いが見事だった。それ以外の役者陣も見事な演技で実在感を物凄く感じた。

家族とはそれじゃあさようならと簡単に縁を切れないもの。一生付いて回るものである。決してハッピーエンドではないと思うがラストシーンでズタボロになったバーバラを包み込むあの光、あの光に感じた暖かさを信じてこれからも生きていきたい。
にいにい

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