あお

ジュピターのあおのレビュー・感想・評価

ジュピター(2014年製作の映画)
3.5
言うほど悪くないじゃん!
良い点はまず映像美。膨大な予算を投じられたのだろうなあ、と序盤からわかる。キャストも豪華。設定自体も悪くはない。

しかし、なんといっても説明不足すぎるのが問題。SFの王道がどうたら、とか感情移入ができないからうんちゃら、みたいな話ではない。そこはまったく問題ではない!伝統やら王道やらは書き換えられていくものだし、キャラクターに感情移入するかどうかは人それぞれ。魅力的やキャラクターはたくさんいるし。最大にして最悪の問題点は、先述のように説明不足!より正確に言えば脚色ミス!これに尽きるのではないか。
地球を農場とし、宇宙でビジネスを行っている一族が利権争いでヒロインを狙いに来た!という話に終始してしまっているのは、背景の描写の不足のせい。バトルが長すぎて細かいところを描けず、設定が活かされぬままただの親族間の勝手な抗争になってしまっている。これが残念すぎる。結果として批評家たちを満足させる内容にならず、低評価の嵐に見舞われている印象。たぶん期待値がデカすぎたというのも大きい。これが無名監督・脚本の作品だったらもう少し評価は高かったと思うので。まあそもそも無名ならばこのクオリティを出す予算は得られないだろうけど。

あとゴールデンラズベリー賞についても言及しないわけにはいかない。バレムは過去に喉を掻き切られた設定がある、というのを知っていればこのような評価にはならなかったのではないだろうか。実際この情報を知っていたため、わたしは鑑賞中に大胆な役作りへの違和感を覚えることはなかった。作中では「喉に噛み付かれた王族がいる」という匂わせのみなせいで、それが=バレムと結びつきにくく、ただ単にカスカス声で喋る高圧的な男というイメージになってしまったのだろう。頂点に君臨しながらも周りを信用せず、つねに冷たく振る舞いながらも、揺らぎがあるバレムは、正直最高だったのに。とくに目の動きが繊細でよかった。芝居の面でも、キャラクターそのものの面でも。精神弱めの敵キャラを好きになりがちなので…

結論として世間で言われているほど悪くはない映画、と言うことができる。好き嫌いは分かれそうだが、個人的には退屈という感情とは無縁の映像であったし、宇宙の過去とかその後とか教えてよ〜!とこの世界観から離れることを惜しむ気持ちも芽生えた。むしろもう何回か見たいかも。
あお

あお