まつこ

真夜中の五分前のまつこのレビュー・感想・評価

真夜中の五分前(2014年製作の映画)
3.0
何を以って私であるのか。寂しさを抱えた男がアイデンティティを失った女と出逢う恋愛ミステリー。

クロノスタシスを聴いた後でふとこの話を思い出して観ることにした。春馬くんがいるから余計に時が閉じ込められたような気になったよ。

サラリーマンだったはずの主人公が中国にいたり色々設定が変わっていた。(何でも卒なくこなす長身そこそこイケメンキャラだったはず)公開の情報を見た時は岡田将生くんが良かったなって思ってたような。日本のキャストでするとチープになりがちだけど行定マジックと中国語がアンニュイな雰囲気を醸し出していた。個人的には冷たい都会的な画がハマるというか高層階から見る2時、3時の風景のような作品だと思っていたので微睡みのような柔らかな光で表現されていたのが興味深かった。

これじゃみんな不幸よね。どっちが彼女かなんてそんなことどうでもよくない⁈とか思っちゃうけど当事者はそうも思ってらんないか。健忘で記憶がめちゃくちゃの中であの仕打ちされたら絶望でしかなくなるよ。恋愛なんて似ているところと違うところに惹きつけられて育てていくものなのに。誰かじゃなくて今の彼女の手を取ることはできないのかなって。疑い始めたら全部信じられなくなるのはどの人にも言えることだけど。だからこそ彼は始めから愛してなどいなかったのかなと思ったり…

原作が好きでしばらく時計を遅らせたなぁ。普段は5分進めているのだけど生き急いでいるような、もったいないことをしているような気がして。もう10年以上も前になるのか。あの人に貸したこの本は返ってきたんだっけ。私の喪失に寄り添ってくれていたあの人。でもやっぱり穴埋めは何かの代わりでしかなくて。悪いことしたかなとコーヒーを啜りながらあの頃を懐かしんだ。
まつこ

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