谷崎潤一郎×増村保造という組み合わせの割には、平凡な出来映え。
前半の同性愛に遮二無二になり突っ走る岸田今日子と彼女を翻弄する若尾文子や、そこに割り込んでくる若尾の婚約者で時には脅し時には泣き落としで相手を籠絡する川津祐介の熱演による丁々発止がヒートアップしすぎてコントみたいになっていて笑えてきた。三人が三人ともお互いの真意を隠したまま相手とやりあい、いかに有利な立場へと持ち込んでいくかという虚々実々の駆け引きも楽しい。
でもそこに岸田の夫である船越英二が参加してから突然ドラマのスピードが停滞し、普通の愛欲のドラマになっていくのが残念。終盤の主人公たちによるゲームはやりようによってはブラックコメディにもなるのに、そうならなかったのは増村監督がコメディが苦手で愛のためにひた走る男女のドラマが好みだったということか(前半のやりとりも喜劇を狙ったというより、男女の異様な性愛を熱を込めて撮ったらたまたまコメディになっただけなのかも)。
元々は市川崑監督で企画されていたという噂があるけれど(『東京オリンピック』の撮影があるためオファーを断ったらしい)、時折出てくる奇妙な笑いといい確かに市川監督が撮った方がしっくりきていたのかもしれない。
主人公たちが話す芦屋弁(谷崎潤一郎未亡人がアドバイスしたとか)によるどこか間の抜けたやりとりも印象的。
それにしても思わせ振りな演技をして、何もせず一言も台詞を言わずフェードアウトしていく三津田健は一体…。