OASIS

ジャージー・ボーイズのOASISのレビュー・感想・評価

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
4.0
1960年代に活動していたロックンロール・グループ「フォー・シーズンズ」の経歴を基にしたミュージカルの映画化。
監督はクリント・イーストウッド。

「シェリー」「君の瞳に恋してる」程度しか聴いたことのある曲は無く、フォー・シーズンズに特に思い入れもないが、フランキーの空へ突き抜ける様な歌声と極力抑制された演出で、地味に進みながらもラストにはまんまと感情が爆発して泣かされてしまう良い映画だった。

メンバーが入れ替わり立ち替わり観客に向けて語りかける演出で、バラバラな方向へと歩むであろう展開を示唆しつつも、勢揃いする場面では音楽の力によって再び繋がれるという最高のカタルシスを生む。
老いた4人それぞれが心情を吐露するカットから若返った姿に変わる瞬間など、ラストに向けて畳み掛ける演出の数々は匠の技が光る所である。

トミーの借金問題やフランキーの家族や娘との不幸な出来事が、それぞれ収束を迎える頃に「君の瞳に恋してる」が誕生する。
その少し以前からバックグラウンドでは予兆として曲がかかり始めているという、背景にまで行き届いた細かい技が堪らない。

全編を通してミュージカルっぽさは無く、演奏シーンの合間にも語りが入ったりして歌によって物語が途切れるという事をうまく阻止していた。
ミュージカルを強調せず、あくまで自分の映画として成り立たせるための「第四の壁を破る」演出だとしたら、これほど功を奏しているものは無い。

そして、エンドロール前からミュージカル色が満開になり街灯の下からそのまま華やかなダンスに雪崩れ込むという、明と暗の切り替えに心が踊らない筈が無い。
クリストファー・ウォーケンだけでなく俺も踊りたい気分になったよ!

ただ、トミーの素行の悪さが一向に改善をみせず、仲違いしたまま再会した時には違和感が拭い去れなかったし、間にもうワンエピソード欲しかった所。
年老いたメンバーの特殊メイクも浮き出ている感じもした。

とはいえ、サクセスストーリーと仲間の裏切りによる挫折、そして再起を軽妙な語り口て堅実に描き、ジワジワと感動を呼び起こしてくれる名匠の手腕を堪能した映画でした。
若き日のイーストウッドの映像やジョー・ペシの名前も出てきたりして嬉しいサプライズもありました。

@大阪ステーションシネマ
OASIS

OASIS