かたゆき

ゴーン・ガールのかたゆきのレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.5
結婚生活5年目を迎えた、ニックとその妻エイミー。
結婚当初は仲睦まじかった彼らもいまや愛は冷め、離婚の瀬戸際に追い詰められていた。
そんななか迎えた5回目の結婚記念日の朝、ニックは今日もエイミーと朝から激しい口喧嘩をして家を出てきてしまう。
でも、自分の帰る場所はただ一つ。
ニックは今後のことを話し合うため、エイミーが待つ家へと戻るのだった。
ところが……、そこで彼を待っていたのは破壊されたリビング、何処を捜しても姿を見せない妻、彼に不審の目を向ける刑事、近所の人々の好奇の視線、そしてマスコミに簡単に踊らされる娯楽に餓えた大衆たちの悪意の連鎖だった。
自分をずっと信じてついて来てくれる双子の妹とともに身の潔白を証明しようとするニックだったが、彼に不利な真実が次々と明らかになり、ニックは二度と抜け出せないような恐ろしい蟻地獄へと嵌まり込んでゆく――。
果たして事件の真相とは?妻は何処に消えてしまったのか?本当に彼が妻を殺したのか?それとも…?

サスペンス・スリラーの現代の名匠デヴィット・フィンチャー監督の最新作は、そんな一組の夫婦が抱えた深い闇をミステリアスでダークに、そしてエロティックに描いた濃厚な2時間20分でした。
けっこうな長尺であるにも関わらず、冒頭から謎に充ちたストーリー展開で観客をぐいぐい惹き込み、二転三転する事態に驚愕させられ、やがて判明する真相に心の底から――特に結婚した男性なら誰しも戦慄させられる良質のミステリーでしたね、これ。

うん、めちゃくちゃ面白いじゃないですか!
この完璧なまでの構成力、優れた映画監督は優れた脚本の力で物語を見せるという典型的な例でしょう。
フィンチャー監督って昔はあんまり好きじゃなかったのだけど、前作の『ドラゴン・タトゥーの女』といい本作といい、ここ最近のその才能の充実振りには素直に驚嘆です。
もう女の怖さとしたたかさを美しく描かせたら彼の右に出る者はいないですね。
特に、金持ちの男に自らの身体を抱かせ、相手が射精した瞬間に咽を掻っ切り、血塗れになりながらも最後まで冷静に作業を進めるエイミーの狂気に充ちた美しさには惚れ惚れとさせられました。

前作のリスベットや本作のエイミーに徹底的に一貫しているのは、男――及び男たちが創り上げたこの社会の傲慢さに対する反抗なのでしょう。
いやー、男としては冷や汗もんっす(笑)。
うん、久々に充実した映画体験をさせてもらいました。
星4.5!
かたゆき

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