らいち

コードネーム U.N.C.L.E.のらいちのレビュー・感想・評価

コードネーム U.N.C.L.E.(2014年製作の映画)
3.5
今年はスパイ映画ラッシュだ。アクション(MI5)、コメディ(キングスマン)、シリアス(007)と、それぞれ際立った特性が目立つ。そんな中で、本作「コードネーム U.N.C.L.E.」は第4の道をゆく。それは監督ガイ・リッチーの大好物「スタイリッシュ」だ。いかにクールにオシャレにキメるか。言い換えれば「キザ」に徹した作りなのだが、大いに楽しんだ。カッコいいことは大好きであります。ラストはスカッと気持ち良し。

東西冷戦下を舞台に、核爆弾を使った世界規模のテロを阻止するべく、CIAとKGBのエージェントがタッグを組んでテロ組織に戦いを挑むという話。

主人公の2人のエージェントを演じるのはヘンリー・カヴィルとアーミー・ハマーだ。2人のファンであり夢の共演と喜びたいところだが、端正な顔立ちに筋肉質or大柄という、外形のシルエットが似ている2人だけに、巧いことバディ感が出るかと心配していた。ヘンリー・カヴィルはMOSと同じ分厚い筋肉が目に余るため、もっと減量して筋肉を落とすべきだったと思うが、2人の個性はちゃんと住み分けられていて、その違いによるギャップがバディームービー特有の愉快なリズムを作り出している。

期待を煽るのは、2人がCIAとKGBをそれぞれ代表する凄腕のスパイという設定だ。2人のスパイとしての力量が発揮されぶつかり合う、序盤のカーチェイスシーンが美しくボルテージが一気に上がる。先ヨミの応酬で一歩も引かない攻防のなか、2人の性格と技量の相違が次第に明らかになっていく。ヘンリー・カヴィル演じるCIAのナポレオンは盗みの天才で、過去の犯罪歴をなくす代わりにCIAに登用された異色のスパイ。アーミー・ハマー演じるKGBのイリヤは、KGBの生え抜きで過酷な試練に耐え抜いてきた努力型の人だ。でもって、並外れた身体能力と殺傷技能を持ち合わせており戦闘能力が非常に高い。

これまで敵対する立場にあり、相手の個性を受け入れられない2人だ。しかしその2人が、ミッションを通じて次第に絆を育んでいく。手ごたえのある友情が描かれるものの、まったく暑苦しくないのが良い。互いにかける情けは命をかけた共闘のなかで、何も語らずとも生れ出るのだ(といってもそんなに重いテイストでもないけど)。典型的なシーンはナポレオンによるイリヤの水中救出シーンだろう。ナポレオンは事故として見過ごすこともできたのだが、イリヤを見殺しにすることはしなかった。パッと見、アツいシーンなのだが、非常にキザに描かれる(笑)。わざわざワインを飲みながら、ギリギリのタイミングで動き出す。生真面目に正義と向き合うのを避けるようだ。BGMで真っ先に「ヒロシです・・・」と思い浮かべるのは日本人だけだヨネ。

そんな男2人の間に協力者として投下されるのは、テロを阻止する鍵を握る整備工の女子だ。ミッションのために3人は偽装するが、恋人役として女子がつくのは、プレイボーイなナポレオンではなく、イリヤのほうだ。堅物な男子に強気な女子、ロマンスに流れるのが自然だが、安易に恋愛関係に発展させずパートナーとしての位置づけを保持したのが正解。惜しむらくはイリヤ演じるアーミー・ハマーの長身に対して、もう少し女子の身長が欲しいところだ。2人の身長差はホテル内の大乱闘のダイナミズムに活かされているが、それよりも背が高くて、峰不二子ちっくなカッコいい女子を2人の男の間に置いたほうが収まりが良い気がした。整備工の女子を演じたアリシア・ヴィキャンデルが出演した「エクスマキナ」を早く日本でも公開してほしい。

整備工の女子がミッションに参加した本来の理由が終盤に明らかになる。鮮やかに裏切られる。裏切りはスリルに転化する。本作では他にも多くの仕掛けが用意されており、そのネタばらしの編集がユニークだ。その作用は展開のスピードを殺さないこと。キレ味を優先した編集しかり、全編に渡ってガイ・リッチー節が全開である。毒っ気もユーモアで押し切る語り口、多画面でキャラ同士の動きを分割し躍動感を演出する工夫、音楽とアクションの見事なシンクロ・・・などなど、彼の映画であることは一目瞭然であり、昨今のスパイ映画にはない味付けがなされている。そして、ラストの起死回生もオシャレで痛快だ。

イリヤの腕時計を巡る結末しかり、ナポレオンが最後にとった選択しかり、見事に気持ち良く終わってくれる。
ドラマ不足は否めないものの、気楽に楽しめる娯楽作としては十分に満足できる映画だ。続編ができたら、追っかけてしまうと思う。

【65点】