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プロミスト・ランドのあのレビュー・感想・評価

プロミスト・ランド(2012年製作の映画)
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グローバル社とかいう天然ガス開発の巨大企業の人間として、マット・デイモンが田舎に送り込まれて、土地買収のために住民を説得しなきゃならないんだけど、知識豊富な住民や環境保護活動家の手強い反対に直面するって話、なんだけど、近年のアメリカ映画けっこうこういう対巨大資本の話が多いなか、巨大資本側の人間が主人公なのがまず面白いし、マット・デイモンだぜ?マット・デイモンって理性とか知性のキャラではなくて、なんか自分でもほんとはよくわかんないけど身体動くみたいなキャラが良いので、そこが本作でも良い感じに出てる。

完璧に安全ではない水圧破砕法の土地汚染も懸念される問題点として浮上するんだけど、どうやらもっと重要なのは自分たちの愛着ある土地を巨大資本に渡したくないってのがある。企業側の文句としては、貧困と荒廃の一途を辿る町にビッグマネー落としますよってことで、救世主になりまっせ的な善意を謳い文句にしてる。それは現実的な問題として一理あるし、実際そこに希望を見る地元民もいる。主人公のマット・デイモンも田舎町出身で、衰退して廃墟となった地元を知ってるからこそセールストークに二重の熱がこもる。
この映画の面白いところはこの二重の部分で、資本主義的セールス文句の偽善と生き延びるための個別的且つ現実的な活路が同じベクトルにありながら、でも一緒にしてはいけないよなってことだと思う。
そういう意味で、主人公を資本側において、単純に資本vs個人たちにしてないのが面白い。
ラスト近くにけっこうなサプライズ展開があるんだけど、それはマット・デイモンが押し殺してた二重性を痛々しく露わにする。自分が自分の意志で「正しい」と信じ動いてきたこと、発してきた言葉が不意に大きな力によって動かされてきたんじゃないかってなって、足場が崩壊する。足場が崩壊したときにはじめてマット・デイモンは自分の言葉を、文字通りポツリポツリと発する。

二重なものの分離という点で言えば、これも立派なガス・ヴァン・サント映画だと思います。
あ