垂直落下式サミング

ONE PIECE ワンピース エピソード オブ ナミ 航海士の涙と仲間の絆の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.2
ここは東の海に浮かぶ小さな島。ノコギリザメのアーロン率いる魚人海賊団によって支配・統治されたナミの故郷ココヤシ村を取り戻すべく、麦わらの一味が戦いに名乗りをあげる。
作り直す価値があった。ルフィのキレポイントが、仲間の尊厳が踏みにじられることだってのが改めてわかるから。そういう、最新話まで一貫したキャラクターの行動原理がハッキリと見えてくる。イーストブルーが最高傑作なんだわ。
アーロン編。後になって、魚人はマイノリティで人間から迫害されてるって可哀想な背景が明かされてフォローされるけど、それにしても胸くそ悪いはなしだと思いますけどね。ベルメールさんとか死ななくてよかった人なのに、ほんとハチとかなんで許されたんだろう。捨て置けよ。思想は根絶やしにしないとって、五老星も言ってたましたから。
もちろん、白眉はナミの涙です。それまで気丈に振る舞っていた勝ち気な女が、泣きながら助けをもともめる。ヤバイよな。これされたら、男の子は頑張るしかないじゃん。格好つけるしかないじゃないですか。みました?ゾロ、サンジ、ウソップ、カッコつけすぎ。女が泣かされたら男は横並びで死地に向かうしか道がなくなるってわけ。
流れ者の渡世人が、民を苦しめる悪のやくざを成敗するってのがワンピースの基本設定。言わずもがな『木枯らし紋次郎』とか『水戸黄門』のような、日本的物語の正統な流れのなかにある。赤髪のシャンクスのモデルは丹下左膳。それに憧れて、自分で顔に傷つけちゃうのが新時代のルフィくん。
戦争も、高度成長も、バブルも終わり、船に乗れずに戦う場所がなくなった子供たちのマインドが、20年以上も七つの海をめぐっているのだから、そんな日本で大丈夫?って思わなくもないっすけど。
勧善懲悪モノの最新版としてのワンピース。バカでもわかるヤンキーマンガだと侮るなかれ、現代に通じるファンタジーとして普遍的なものを描いている大衆作品であります。
戦闘シーンも原作に忠実で、デジタルチックなオーラみたいなのを纏ったりしていないのがよかった。ハンター試験編を作り直した奴は見習ってほしい。