Rily

リトル・フォレスト 夏・秋のRilyのレビュー・感想・評価

3.5
仮に、夏ばっぱの娘が春子じゃなくて、アキの心を持ったユイちゃんで…、住んでるのは海に囲まれた北三陸っていう街じゃなくて、山や森に囲まれた小森っていう集落で…、放課後に自転車で向かうのは袖ヶ浜じゃなくて、ちょっと歩いたら着く田んぼや畑で…、そこで獲るのはウニじゃなくて、稲やトマトやクルミで…、ちょっと疲れて、みんなが集まるのはスナックリアスじゃなくて、古びた一軒家で…、その窓から見えるのは待合室や駅のホームじゃなくて、ひたすら緑の葉っぱや湿った青い空で…、そこで食するのはいまいちピンと来ない「まめぶ汁」というものじゃなくて、いまいちピンと来ない「米サワー」というもので…、その味がいつもより美味しく仕上がったら、なんだかわかんない「じぇじぇじぇ」じゃなくて、なんだか普通の「んー、おいしー」で…、そこにはみんなの笑顔とホッとする気持ちがあって、そこにもみんなの笑顔とホッとする気持ちがあって…、

…自分たちが作ったご飯を食べるのは、生きていくためだからであって、生きていくためにはご飯を作って食べて…、
…その生きるためのご飯にありつくには、そのご飯の素材があって、その素材を獲るためには、その素材を獲る人にしかわからない“感触”があって…、その……

自分自身に決定的に忘れていたものと欠けていたものに気付かせてくれる。

そんな作品。
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