柿仔織すきゑ

リトル・フォレスト 冬・春の柿仔織すきゑのレビュー・感想・評価

5.0
前編の「夏秋」が素晴らしかったので、この「冬春」も続けて一気に観てしまった。結論としては、最高に素晴らしかった。

前編で感じた「密かな物語性」は今回も変わらずで、多くは、というかほとんど語らない。結局母親のことも(いち子にとって)分かるようでわからない。劇中でもあるように「自分の身体で感じたことしかわからない」ことを、登場人物自ら体現してくれてる。
物語の余白に想いを馳せていく、この感じがとにかく心地いい。原作漫画凄い読みたいのだが、この余白が埋まってしまうのが寂しいような楽しみなような……でももしかしたら原作でも余白のままなのかもしれない。

この映画を薦めてくれた人が冬が一番好きって言ってたのだが、確かにそれはわかる気がした。静かでドラマチックとは無縁の流れの中ではあるけれど、起承転結の「転」に当たる。静寂な冬の雪山で、何かが動き出す予感があった。
あと、ラストの春編で初めていち子やキッコが愚痴や負の感情を露わにするのが印象的だった。働くシーンも含めて、リアルな日常を最後に少し垣間見せてきた。

流れる空気感、音楽、映像美、食事、台詞、密かな物語性、、、とても愛しいものが詰まってる映画でした。