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南太平洋の若大将のmのネタバレレビュー・内容・結末

南太平洋の若大将(1967年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

東宝35周年記念映画であり、あらゆる意味で豪華さが際立っている。例えば、上映時間はシリーズ史上初の100分を超え、東京タワーからタヒチまで大規模なロケが行われている。カウアイ島ではスリル満点の空撮ショットがあり、タヒチでは水中撮影(🦈)を駆使し、ラストの武道館での柔道大会に至るまでてんこ盛りである。

監督・古澤憲吾の味付けも、とにかく濃ゆい。
その被害者は青大将だけではない。若大将までもが嬉しさのあまり奇声を上げながらドラムを乱打し、転倒する。また、外国人のスチュワーデスに、澄ちゃんのイメージを重ねてしまう惚気っぷりだ(これは同監督作『アルプスの若大将』でも同様の演出あり)。

マネージャー・江原達怡の存在感が薄れ、ハワイで出会った前田美波里のお色気に取って代わられている。京南大学から日本水産大学に変わったことも、ストーリーの都合に合わせた変更に思えて、納得がいかない。ギターを手放したどころか、口パク隠しさえしなくなり、海外ロケでは英語詞ばかり歌っていたのに年齢と共に保守化したのか日本語で歌うようになった若大将には失望する。さらに、前田美波里のソロ歌唱パートまで用意され、なんとカメラを指差しながら歌い出す。

初期三部作の洗練を思い返すと、本作には一抹の寂しさを感じずにはいられない。
しかし、もちろん素晴らしい点もある。
例えば、青大将がモノレールと並走しながら車を爽快に疾走させる場面はカサヴェテスの『アメリカの影』に匹敵する狂熱のセッションだ。仰角アングルの多用も特筆すべき点だろう。

そして何よりも、加山雄三の顔にただ1度だけ浮かんだ、素の笑顔である。
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