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夜のとばりの物語のcheeeezmのレビュー・感想・評価

夜のとばりの物語(2011年製作の映画)
3.5
2021.56作目。


どれぐらい、私が好き?

6つの愛の物語。
夜な夜な好奇心旺盛な少年少女が、古い映画館で映写技師と共にお話を紡ぎ、6つの世界の主人公となる。

「狼男」
昔投獄された、騎士のヤン。命を救ってくれた王女と結婚する場面から、物語は始まる。その結婚式の陰で、妹王女が泣いていた。結婚式の夜、姉王女は秘密を言いたくないと口を閉ざすヤンに対し、執拗に秘密を言うよう迫る。「私を愛していないの? 」重い口を開いたヤンの秘密は、満月の夜に狼男になってしまう、というものだった。
姉さんめっちゃ口軽いな? 誰も妹の話に耳を傾けてくれなかったのが、寂しい。
愛を免罪符に相手を陥れようとするか、すべてを受容して共に歩む愛を選ぶか。

「ティ・ジャンと瓜ふたつ姫」
ふとしたことによって、死者の国に行ってしまうティ・ジャン。死者の国での唯一の生者は、死者の国王の娘、「瓜ふたつ姫」と結婚できると聞いて。
いや、ティ・ジャン、自分勝手すぎんか? お姫様と結婚したくて頑張ってたくせに。うーん、童話的と言えば童話的。人を殺めるのではなく、人を助けて救われるというのは教訓ぽい。

「黄金の都と選ばれし者」
黄金の都を支えているのは、無敵の恐ろしい獣。年に4度の祭りで、最も美しい娘を生贄にしないと、都は滅びる。そこへ来た異国の青年は、生贄の娘を救おうと立ち向かう。
選ばれることに捕われ、幸せだと思い込むことは正しいのか。藤子・F・不二雄の作品で、似たようなものがあった気がする(ミノタウロスの皿だ)。
結局は大衆に選ばれ、賞賛された。誰かに選ばれることは、命を賭ける理由になる。

「タムタム少年」
太鼓を叩くことが好きな少年、タムタム。周りからはうるさい、と疎まれていたが、ある日魔法の太鼓を持つ師匠に出会い。
才能も、鍛錬がなければ昇華されない。どな素晴らしい道具も、持ち主に力がなければ、その力は発揮されない。どちらに力があるのかしら。
魔除けで治療しようとする描き方、ちょっと面白かった。

「嘘をつかなかった若者」
珍しく、少女の方が乗り気じゃなかった作品。どうやらこの王女は性格が悪いらしい。
いや確かにとんでもない性格だな。絶対に嘘をつかない若者と、話すことができる馬。そして、賭けのために若者に嘘をつかせたい王女と、歌う馬。若者に恋をけしかけた王女は、「あなたの馬の心臓を食べないと、私は死ぬ」と言い。
いやこれ許せんやろ。どうしても少女が演じたくなかったのも頷ける。卑劣なことをされたけど、愛からは目を背けられない。

「鹿になった娘と建築家の息子」
極悪人魔術士、ザカリアクに囚われた娘、モード。モードと相思相愛の建築家の息子、チボーはその技術を使い、モードを救いに行く。めでたくザカリアクの手から逃れた2人だったが、ザカリアクの怒りを買ったモードは、臆病な牝鹿に変えられてしまう。
題名に引っ張られるけど、そういう展開だよね、となった。愛は不滅。ちょっと男側が情けない感じはある。「若い2人の間に産まれる力は、妖精の力を凌ぐ。」


1番好きだったの、「黄金の都と選ばれし者」かなぁ。影絵のアニメーションということで、飽きるかと思ったけど存外楽しめた。他のオスロ監督作品も、観てみたい。
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