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ニトラム/NITRAMのcheeeezmのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.6
可哀想だと思うし、不幸だと思う。でもどうして希死念慮が周囲に向いてしまったしまったのか、それほどまでにこびりついてしまった自己否定がやるせないと、そう思ってしまうような、高みの見物のような感想を抱いてしまう自分が、憎かった。

どうしようもない自己否定は、拭い切ることはできない。「僕が死ねばよかったのに」「僕以外になりたい」。その希死念慮が周囲に向いてしまったのは、肯定してもらえると思ったからなのだろうか。
思いやりがあるのに、ない。名前を呼ばれなかった主人公は「二トラム」とからかわれ続け、最後暴発した。

障害があろうと愛そうとする父も、愛せないけど寄り添い続ける母も、余裕があるからこそ愛し向き合ったヘレンも、誰も間違いじゃない。ただやっぱり障害者に寄り添えるのは余裕のある人で、余裕とはお金なんだなと思ってしまった。
自分の醜い部分が露呈する映画だな、こういう映画は、嫌いだけど避けて通れないよな。

「お前おかしいよ」。私も小さい頃よく言われた言葉だ。最近だって、言われているのかもしれない。自己否定はひどいし、毎晩死にたいと思う。それでも殺してやろうとは思わない、しかも無差別に。
殺すことで肯定されようとするのは、私が経験したよりももっと深い絶望を味わったからだろうか。私も絶望すれば自分への刃は他人へ向くのだろうか。それとも障害者だから? 彼が「二トラム」だったから? じゃあ私だって一歩違えばそう思ったの?
怖い、ただひたすらに怖い。

不幸は人を変える。余裕はお金で買える。
銃社会でない日本でも無差別殺傷事件はあるし、障害があろうと生きている。差別はしたくないが、私は障害者と認定されそうだった子どもだからこそ、正直障害者よりも彼らを支える人にこそ思いやりを感じてしまう。それは間違いなんだろうか。
でもきっと、法社会は「二トラム」を人間として扱い、判決を下した。それがすべて。
それがすべてだけど、やっぱり嫌だ。救われてほしかった。障害があっても幸せな人生が歩めるんだと、全ての人間に笑ってほしいと思う。それはやっぱり、楽観主義すぎるんだろうな。
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