みや

アマデウスのみやのレビュー・感想・評価

アマデウス(1984年製作の映画)
3.9
【凡庸なる人々よ、罪を赦そう】

好きも嫌いも紙一重。

モーツァルトという天才を前にして、自らの非凡さを思い知るサリエリの物語。

神に全てを捧げてきた人生だからこそ、神の子・モーツァルトが下劣な人間だと知り失望するサリエリ。

宮殿での陛下と音楽家たちのやりとりはまさに社会の縮図で、サリエリもまたそれに従うのだが、モーツァルトは伝統や常識に囚われない。

モーツァルトへの嫉妬が神への憎しみに変わった日、サリエリの音楽家としての才能は死んでしまったように思う。
(特にディレクターズ・カット版のモーツァルト夫人がやってきてペンを放り投げるカットが印象的だ)

社会に蔓延する不公平・理不尽・冷酷さは、日本では神への信仰と直接的には結びつかないかもしれないが、間違いなく存在しており、圧倒的な才能を前にして打ちひしがれる気持ちがひしひしと共感でき、なんとも言えない気持ちになった。

宮殿に仕えるサリトリ《天才》でさえも、モーツァルト《超天才》のすらすらと音楽が出てくる口頭記述の早さに追いつけないシーンは見ていて悲しくなる。

ただ、モーツァルトの最期を共に過ごし、彼のレクイエムに携われたこと、モーツァルトの音楽の真の理解者として互いに分かち合えたことは、凡庸なる人々の希望の光にも思えた。

“あんたも同じだよ。この世の凡庸なる者の一人。私はその頂上に立つ凡庸なる者の守り神だ”
みや

みや