高校生に見たときは、ただの伝記映画ぐらいにしか感じ取れなかった。が、20歳過ぎて映画館(新宿のタイムズスクエア)でディレクターズカット版を見たときに、腰を抜かした覚えあり。モーツァルト、というよりはサリエリの物語であることに初めて気付けた。
ディレクターズカットで挿入されたシーンにそれを決定した部分がある。
(おそらく童貞であっただろう)サリエリの元に、口利きをお願いするために夜訪れたモーツァルトの妻コンスタンツェ。笑顔で服を脱ぎ始めるコンスタンツェ。笑顔で迫る上半身裸の彼女を見て、サリエリはすぐさま召使いを呼び、コンスタンツェを追い返す。
このシーンはディレクターズカットで初めて挿入されたらしいが、このカットがあってこそ、作品のバックグラウンドにあるのが、サリエリの凡人性プラス童貞力であることが表現されたように思う。
そりゃ童貞が粋がって、「口を聞いて欲しけりゃ、夜一人で来な。あとはわかるだろ」みたいなセリフをいったら、相手が本当に来てニコニコ笑いながら(内心はわからない。というよりこういう時の女性の気持ちは誰もわからない)目の前で裸になったらビビるもん!しかもすげえ乳がでかい。
それからは凡人と天才、と言った対立構造だけではなく、モテ男と童貞の対立構造がプラスされた。
あのエンディングがそんなに崇高なものでもなく、必死に世界をひっくり返そうとしている人間臭さ満点のサリエリにも思えた。
そんなこんなで、この作品は自分の中で特別なものになった。