ほおづき

紙の月のほおづきのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.5
夫との関係に虚しさを抱く主婦が、大学生と不倫関係に陥って逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚が麻痺してしまい、勤務先の銀行の顧客の預金を使い始め犯罪に手を染めていくっていうおはなし。 

鑑賞前は「年下の恋人との快楽におぼれ転落していく女性」のお話かと思っていたから、前半部分の恋愛過程がサッパリと一瞬で描かれてしまってたのはびっくりした。
そういう物語じゃなかった。


この作品は明確に実話を基にしてるってわけではないらしいけど、「三和銀行オンライン詐欺事件」「滋賀銀行9億円横領事件」「足利銀行詐欺横領事件」など、実際に女性が男のために多額の現金を横領をする事件っていくつかあったらしくて、その記事を読んでるだけでもなんだか悲しい男女の心理が見え隠れして面白い。


作中で「受けるより与えるほうが幸せ」と言ってるように、主人公が欲しかったのは男でもお金でなく、人に何かを与えることの喜び。この作品は、それを感じ、結果その歪んだ幸福感だけでしか自分を開放できなかった悲しくも生真面目な女性の覚醒の物語。 
そしてその代償は、いままで受ける側だった人間から与えれるという逆説的な意味にもとれるような最後のシーン・・・
    
ただ単に貢ぐ女性心理ではなく、その心の闇のさらにその先に焦点を当てたところにこの物語の意味があったのだと思った。