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ニンフォマニアック Vol.1のおるふのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
4.3
雪の降る夜のとある路地に倒れている女性。通りすがりの老紳士セリグマンは、女を自宅で介抱する事にする。自らを「ニンフォマニアック」(色情狂)と語る主人公ジョーの性遍歴をセリグマンとの対話・回想形式で語る、2部作全8章計4時間の大作の1作目。
愛と性を切り離し生きてきた女の物語。そのジョーの心の多面性を豊かな映像美ともに炙り出した衝撃作。

主にセックスシーンを演じる“若いジョー”役のステイシー・マーティンの怪演は、まだ新人女優だという事を感じさせない貫禄があってその大迫力の演技に今後要注目の女優さんだなと思った。

トリアーの主人公に心の隙を与えず極限に追いつめる、観ている者を突き放す“S”っぷりはハネケのようだ。
『アンチクライスト』『メランコリア』に続く“鬱三部作”最終作と言われている割に、その軽快なストーリー展開でそこまでの暗さを感じない。それもトリアーのアイロニカルなユーモアとメランコリックでありながらどこかキラキラしている神秘的な空気感の演出に起因している、言葉にするのが難しいのですが、化学反応のようなものなのかなと感じた。

5章〜リトル・オルガン・スクール〜が一番好きな章でした。唯一そこで愛のあるセックスを見る事が出来て、バッハのポリフォニー(複数の旋律が同比重で絡み合う、“伴奏” “主旋律”等と分けない音楽。)と、ジョーのセックスを対比させた演出はとても美しかった。
“性描写の美しさ”でいうと近作ではスティーヴ・マックィーンの「SHAME」と並ぶ映像美だった。
「なんかエロい映画やってるらしいよ〜。」くらいのノリで来た人達はきっとそこまで楽しめない作品ではないかなと思った。

余談ですが、予告見てた時から、主題歌ラムシュタイン(ドイツのメタルバンド)かな〜?と思っていたらやはりそうで笑った。でも「♪ニンフォマニア〜ック」って聞こえるところ、ドイツ語の空耳的なやつかと思ったらそうじゃないんだよな〜。新しく歌ってもらったのかな???
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