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ニンフォマニアック Vol.1のあのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
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逆説的に性行為の脱構築が行われています。つまり、メタ的に性行為とは何か?そこから人間とは何か?を問うものであり、私たちの生態論理を拡張し得るものです。哲学的、芸術的に押し広げ展開される手法は、あらゆる読み方、解釈がし得る点で非常に興味深く、大きな可能性を明示します。その形式と方法論は古くはバタイユ、昨今ではスラヴォイ・ジジェクに親和性を感じます。
脚本、演出は非常に緻密に構成されています。それはある種美術的な記号の用い方です。そして暴力的にも執拗に問いが繰り返され、対話の重要性、逆説的にも人間の多様性が主張されます。そうして映画表現の可能性を求めながら、社会の一元的なシステム、イデオロギーに真っ向から立ち向かう監督の姿勢は、真に芸術的であると思います。

しかし、読解する為には、哲学的、精神分析的、キリスト教的、あるいは美術史における知識が前提として必要であり、つまりは観者の思索ありきの作品で、私が危惧する問題点としては、観者の狭い価値観、あるいはイデオロギー的に、シニシズム的に拒絶され、監督、あるいは主人公はイカれた変態として回収され得る可能性です。この作品は主観的感情、イメージのフィルターを通して一元的な価値観に照らし合わせて観られるべきではありません。色眼鏡をかけて映画は娯楽に回収されるべきと望んでいる人達にとっては正に厳しく写るでしょう。
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