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君たちはどう生きるかのあのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ネタバレありの読解です。

一般的なファンタジー的イメージのジブリとは異なるイメージをこの読解で明らかにしてしまうので、読む方は注意して下さい。
芸術家、作家としての宮﨑駿の顔だけに焦点を当てています。


まず脚本に関して、監督が言う通り、訳のわからないことになっていると感じました。
このような感覚を覚える場合には、試行錯誤、意識の変化、あるいは比喩や記号を詰め込み過ぎるといった、制作途中で脚本を変更しているケースが一般的に多いです。
それがあり得ることとして読んでいます。



・彼岸について
主人公の少年が石で頭を打つ流れは、自殺の比喩でしょう。なので地獄へ堕ちると。
地獄で働く漁師も同様の傷がありましたね。あれは自殺したので地獄で唯一働かされていると明示しています。自殺は大罪ですからね…
ナツコも白い装束(死装束)でしたね。死因は定かではありません。
しかし、このような主人公が地獄に堕ちる設定は間違いなくとも、後の流れとは辻褄は合わないように思います。

・戦争について
あの宮﨑駿が、一神教として解釈可能な物語を作ったことに大きな違和感がありましたが、第二次大戦の大日本帝国のメタファーとして考えた場合、腑に落ちました。
大叔父あるいは大伯父(天皇)、インコ(軍隊)、ペリカン(政治家)として、
強欲で雑食と言われるペリカンがワラワラを食べるシーンは、少子化を表した比喩として考える他、本に組み込まれた意図は考えられません。そうなれば、ペリカンが群がる意味不明な開けてはならない門付きの墓は靖国神社として読めます。
インコは実質的に取り仕切っており、軍政を思わせます。インコの王は大叔父(大伯父)を殿と呼びますが、これは一神教の神ではなく天皇であると示したかったのでしょう。
インコのみが現代で小さくなりましたが、これは軍隊が自衛隊へ縮小したと読めます。糞に関しては私たちはそれを被りながら生きていると強調したかったのだと思います。
大叔父(大伯父)は直系ではあるが女性である二人には引き継げとは言わず、幼なくとも男性である主人公を待っていた、引き継げと言うのですから…一大事として厳重に扱われていたナツコが産んだ子供も男性でした。これは意図的です。
宮﨑駿はこれまでの作品でも取り憑かれているように尽く戦争をメタファーとして組み込んでいますから、このような意図として読むのが妥当のように思います。
大叔父(大伯父)が宮﨑駿自身であり、スタジオの終焉だと一般的に騒がれていますが、自身が一神教の神であるように本を書くタイプではありませんね。

主人公の境遇などは宮﨑駿の少年期を原案にしているようですね。
彼は戦争と向き合いながら生きてきたことは良く知られています。そういった意味で自伝的です。

・若者の社会問題への言及
青サギが主人公の母親の真似をするところはオレオレ詐欺を想起させますね。このような意図がなければ、あのような演出はしないでしょう。
前半のベッドで主人公が水を飲むシーンも非常に特異でした。あれは水タバコを想起させます。通常これまでの演出であればコップです。
主人公がタバコを引き渡して利を得るのも若者の大麻売買を…
とにかく社会問題に言及せずにはいられない人ですから、冒頭に書いた自殺を含めてこれらは全て意図的であると思います。


本は言いたいことだらけで大変なことになってますがしかし、冒頭から見事なアニメーションでした。炎まで生きていましたね。
冒頭から演出が大変素晴らしかったです。顔、表情や声だけではなく、身体の動き、その他様々な詩的要素であのように感情を表現出来るのは恐ろしいことです。アニメ固有の過剰さによって実写以上に人間らしさを獲得しているようにすら思います。
あ