ikkkkko

ソロモンの偽証 後篇・裁判のikkkkkoのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

私は原作を読んだ状態で、未読者と一緒に前編後編を続けて観た。
すると未読者の感想が、柏木君が自殺した理由はなんやったんや、ということだった。
たしかにもし自分が未読だったらそう思ったかもしれない。
原作での柏木君の印象は、もっと頭が良くて、全てを達観した、不気味な、次元の違う感じがあった。
それが映画だとモリリンが怯えるという描写のみでしかそれは伝わらず、実際の柏木君の言動は小物感が否めない。
特に屋上でのヒステリックな感じ。
あんなにキーキー叫んでたっけ?
読み返してないから分からないけど。
原作を読み終わった時には特に柏木君の自殺に疑問は抱かなかった。
私が抱かなかったように、傍聴席にいた人含めた登場人物皆んな、柏木君の人物像からすんなり受け入れられたから、そもそも自殺した理由は?なんて質疑はなかったんだと思う。
要は宮部みゆきの表現力と、柏木君役の子の演技若しくは、キャスティング、キャラ設定に開きがあり過ぎたんじゃないかな。
(ちなみに読後すぐに、もし映画化するとしたら設定を高校生に変えて、柏木君役は染谷君がすると確信していた。笑)
あれじゃほんとただ学校や世間を引っ掻き回した、こじらせワガママ小物ボーイでしかないからなんで自殺したんやって聞きたくもなる。

他の役者さんや子役は本当に良かった。
涼子役の凛とした意志の強そうな声や、当時の中学生らしい清々しいほどのすっぴんは逆に美しかった。
あと、モリリンの隣人、原作だともっとジワジワ嫌な感じを出してたけど、その辺のエピソードを短縮するぶんホラー並の怖さで存在感抜群だった。笑

今回に限らず、小説と映画ってどちらも良いところはあるけど、改めて小説の映画化って難しいんだなと思った。
小説はその作者の作品の特徴も踏まえて読むから、今回だと宮部みゆきらしい、大きなトリックやどんでん返しではなく心理描写や背景、社会情勢をもって読ませる作品だなと思って読めるけれど、映画だと余程それらを上手く表現できないと、時々レビューで見られる「オチがあっさりし過ぎ」とか「犯人に意外性がなかった」とか「もっとドロドロしてたらな」という感想になってしまう。
それでもこの映画はちょっとした涼子の表情や、有名子役のほとんどいない等身大の生徒達、変にオリジナリティーを持たせなかった脚本等によって、一緒に観ていた人にどの場面もどの仕草も表情も見逃してくれるなよと言いたくなるほど楽しく観ることができた。
それだけに柏木君の小物キャラによって説得力がなくなるのが惜しくてしょうがない。(しつこい。笑)

あっさりし過ぎって思った人には是非この作品についての宮部みゆきさんの対談を読んでほしい。
まぁここは映画の感想を言う場なのに原作と比べ過ぎるのはナンセンスなんだけど。
ikkkkko

ikkkkko