享楽

奪還者の享楽のレビュー・感想・評価

奪還者(2014年製作の映画)
3.5
オーストラリア経済破綻から10年後のテロップから始まるこの物語。
荒廃した砂漠に1人の老人。主人公のエリック。彼は時代の流れにより仕事を、妻をも失ってしまって街を放浪している中、唯一の宝物である車を強盗集団に盗まれてしまい、その奪還を試みる。途中強盗集団のリーダーの弟のレイ(見殺しにされ置いて行かれた)を拾い、彼と共に復讐を果たそうとするが…

タランティーノ絶賛ということで鑑賞。
他レビュー者の方々がいうような”世紀末感”が顕在されているかどうかというと微妙なところ。そもそも撮影地がオーストラリアだし、砂漠っぼいところはあるだろうし警察の介在が薄くなり無秩序さが浮き彫りになっているが、世紀末ってところまでは到達していない印象。

ストーリーはハッキリいって全体としてメリハリはなし。寡黙な老人が車を取り戻すべく淡々と強盗集団を追う最中、街の様々な人と出会いその世界の事情を知ったり、共に旅するレイとの関係性が漸次的によくなってゆくのは実物かもしれないが、感情移入的表現ないし情緒面での豊かさはどうかといえば…想像力次第であろうか。

前半はロードムービー、中盤からヒューマンドラマ的要素が若干垣間見え、普段映画を鑑賞しない普通の人からしたら退屈な印象は否めない。

後半強盗集団の自宅に乗り込み、レイとその兄との銃での駆け引きはなかなかの緊張感。

最後にエリックは車を再び取り戻せることになるが、レイの死によるものか、喪失感ゆえなのか涙を流す。あのシーンは非常に良かった。「殺した者のことは覚えておけ 苦しんで当然だ」などの中盤におけるセリフから、彼がまだ人間性を失っていないことを示唆していて、それを引きずって敵やレイが死んだ後しっかり火葬 埋葬している姿は美しかった。

カタルシスは何か?荒廃した世界ではもはや車などの物体はさしあたり重要ではなく、他者との関係における情緒的な繋がりが必要なのか、とかその辺なのではないか。彼は終盤車を取り戻したが、その時における表情の描写はほぼなく、今は亡き人を埋めるところでロングカット。
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