豚

ライト/オフの豚のレビュー・感想・評価

ライト/オフ(2016年製作の映画)
3.7
Youtubeに投稿された短編映像をもとに、設定を引き継ぎながら長編映画化したホラー作品。
この手にありがちな霊障だけの地味な序盤というシークエンスが取っ払われており、開幕から恐怖全開。
全体的にはよくも悪くもオーソドックスであるものの、「電気が消えると現れる」という根源のアイデアをこねくり回すのではなく、シンプルに描いたことで鮮烈な恐怖感の演出に成功しているのは、製作のジェームズワン含めホラー映画をよく分かっているスタッフのおかげなのかなとも感じる。

電気が消えると現れるという骨子のアイデアは抜群に絵面が良く、フッと電気が消えた瞬間、観ている側は「何かが起こる」といやがおうにも意識を植え付けられる。
ロウソクだったり家の中だったりお札や魔除けだったりと、化け物から身を守る手段はこれまでいくつものホラー映画で描かれたものの、"電気のスイッチオン/オフ"という、非常に日常的かつ人工的要素に物語のギミックを委ねたことで、たとえようのない異物感が作品に落とし込まれているのがとても新鮮だった。

「闇に潜む謎の存在」という、ともすれば凡庸になり兼ねないメインテーマも、スイッチオン/オフという救いにも終わりにもなる二極性によって、ひりつく緊張感とともに作品全体の恐怖度がこの上なく研ぎ澄まされていく。
やがて観ている側も主人公たちとどんどんシンクロしていき、「電気のスイッチ」自体に拒否感を覚えだすものの、スイッチを使わなければ襲われるという絶望感のもたらす二律背反こそが、作品としての絶妙な快感をもたらせてくれているように思えた。

恐怖のアイデアとそれの描き方に関しては、総じて昨今のホラー映画の中では抜きん出た良作だと感じます。
ただし明確なルール付けがされていないため、闇の存在が「いつ」「どういった条件で」「どのようにして」動いたり襲ったりするのか、かなりあやふや……というか怖さで押し切ってしまうため、その辺りはかなり不満が残りました。
そもそもの設定にも無理があることが多いですが、うまく気取られないよう演出してあるのはとてもうまいなと思います。
総合的にホラー好きならかなり満足できる出来ではないでしょうか。

エンディングが実は2種類あるようで、本来のものとボツバージョン両方観たけれど、うーん、どっちもどっちな感じ……。
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