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ショート・タームのtsubomiのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
1.0
「無意味な色付けのポスターからして最悪すぎる」と知り合いの監督が酷評していたので、ずっと気になっていた。
この前情報があったから余計にそう感じたのかもしれないが、たしかに最悪な作品だった

好みの問題かもしれないけど、遊び心のある狙ったセリフってところどころに散りばめられてこそ効いてくると思うんだよね
毎シーンで「そういうゲームあるの?」「今思いついた」とか言われても鬱陶しくて仕方なかった

暴れるジェイデンを抑えるシーンは特に嫌いだった
抑えつけた後にメイソンが唾を吐かれたネイトの心配をしたり、「ケーキは美味しいか?」ってグレイスに聞くのも最悪すぎる。そんなの裏でやってくれ
"息子に反抗期が来たから赤飯炊いた"というエピソードをTwitterでたまに目にするが、それと同じような、その場を明るくしている風に見えて子どもの気持ちを蔑ろにしている気持ちの悪い大人たちにしか見えなかった
ケア施設で働きながらも子どもに気が及ばないただのポジティブバカ職員を描きたいならとてもいい演出&脚本だと思うけど、場を和ませるムードメーカーな職員として彼を描きたいのであれば、あのシーンは彼を殺していると思った

グレイスも仕事として彼女を支えなければならない以上、ケアする立場がケアされる側に直接的に成長させてもらうのは違くない?と思う
たとえば教師が生徒の何気ない発言から何かに気づかされることはあると思う。けれど、生徒が先生を慰めようとして意図した言葉で先生を慰める構図ってすごくおかしくないですか?
「先生つらいねよしよし」って中高生の子どもが教師を慰めるのなんてどうかと思う。だって教師という"仕事"だから
「過去を引きずる人が似たような境遇の子どもに励まされる」という描写を入れたいのであれば、同じ施設にいる年の離れた同士だったり、この作品と同じ設定なら出会う場所を変えるとか、そういう対等な立場を作らないと…なんか変でした
過去に辛い経験をした不器用なグレイス、を軸にしたいなら分かる。けどこの作品でグレイスは彼らを上手くケアしている職員として描かれていて、そこが本当に納得いかなかった

ネイトが恵まれない子どもたちって発言したのも新人という言い訳がきかないヤバ発言だと思うんだけど、あの場でネイトはそのままに子どもを叱ったのもモヤモヤした
私だったらこんな人たちの元でケアなんてされたくないし脱出したくなる
この人たちをいい人だと受け入れてしまうのは危険だし、目に見えない虐待のように思えた

所長のランプを投げるのだって、怒りが湧くのは分かるけど、暴力はダメと教えてる立場の人間が自分の衝動を抑えきれず子どものいる施設の中でランプ壊す?説得力がまったくない

あと細かいけど、ジェイデンが脱走した時に「誰かが脱走した」っていうセリフ要らなくない?そこにいる全員がそのことを分かるだろうし、私たちも3秒後に分かることをご親切にどうもありがとう
説明台詞って学者や刑事のプレゼンみたいなイメージだけど、こういうパターンもあるよなと思わされました

とにかくツッコミどころが多すぎて、な〜んでこんなに評価されているのかが不思議でならないです

監督は実際に児童養護施設で働いていた経験があるといい、リアルに近いのかもしれない。出て行く子、入ってくる子、パワフルな職員、子どもに寄り添う職員、ポジティブな職員、新入りなど、自分の経験からいろいろ詰め込みたかったのも分かる。が、あれもこれもで軸やテーマが定まっていなくて結局何がしたかったのかわからない
グレイスに焦点を当てたいなら過去に辛い経験をしたことをもっと広げて描くべきだし、少しでも成長しているんだという姿を見せたいならジェイデンと一緒に車を壊してはいけないと思う

ただ、複数の人の視点から浅く描いてる点で言えば、これがドキュメンタリーだったら割とよかったのではないかと思う
けれど上記のような不自然な部分が多すぎるので、フィクションドキュメンタリーという変なジャンルになってしまったような気がします

こんなに不満があるということは、多分私はこの作品がもっといい形で観れることを望んでるんだと思う

口で言うのは簡単ですね
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