菜月

ショート・タームの菜月のレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.5
まず、この話はストーリーが濃いし、色々考えさせられるし、良いシーン、最後の終わり方も素敵だから色んな人に見てほしいと思う。家族でなくても誰かが傷ついた子供を支える人の大切さがよく伝わってくるから、とても良い映画です。特に幸せな家庭で育った人たちに見てほしい。自分は家族に恵まれて幸せやってことを感じてほしいと共に、世の中にはそうじゃなくて苦しんでる子も沢山いるってことが伝われば専門職としては嬉しい。

私は就職1年目で序盤観て、仕事絶対辞めたくなるから一人前なったら全部観よ思ってた映画🎬3年目になって辞める目処ついたからやっと鑑賞。
同じような職場で働いてるからとてもわかってリアル。普通の家庭で生まれたかったって言って、ずっと生きにくさを抱えてる。それで色んな病気になる子もおるし、死のうとする子もいるし、社会に出てからも孤独で苦しんでる。寄り添って話を聞く存在はもちろん大事やねんけど、大人への信頼感が無くなってるから、どうせスタッフだから仕事で優しくしているだけでしょ?信用しても一生私と一緒にいてくれないでしょ?って悲しんで拒否する子もおる。それほど親から受けた傷、トラウマは物凄く深い。だから、スタッフ側もグレイスみたいにその子供の親に嫌悪感を抱く気持ちは持ってしまうからあの車壊すシーンは良くわかる。(グレイス自身の過去のトラウマもあってあの女の子に入り込んでる部分もあるけど)
子供が自立して、家族って言っても結局血が繋がってるだけで、あんなやつ赤の他人やって思えるようになれば1番良いけれど。でもいざ結婚して子供ができても、グレイスみたいに自分も親のように育ててしまうんじゃないかって恐怖もあるし、荒れていったり、どう見てもやばい異性に依存してトラブルに巻き込まれちゃう子供もいる。逆にふっきれて自分のしたいように生きる子もいる。最悪自ら命を断つ子もいる。それは人それぞれ。

ただ、この施設はとても良い施設で良い話が多いけれど、現実はもっと厳しいからギャップもあって悲しくなる。虐待、過干渉、高圧的で支配的な親、DVがもっと発見できて保護できればいいけれど現実は厳しい。良くない施設があるのも現実。日本は特にそのサポートが乏しい。ニュースでもよく出てるけど、いくら児相が駆けつけたって、そういう親は取り繕うから結局虐待が発見できないことも多い。児相の職員は専門職ではないし、決定的証拠がないと親の言うことを聞いて終わってしまう。日本のこういう子供たちを支える体制は今後変えていかないと、ますます連鎖して増えてしまう。
良い映画で観て良かったけど、現実を知っていてそれと比べてしまうから、私はもう一回観るのはまだしんどいな。
今は後1年でこの仕事を辞めるけれど、今後そういう子たちをサポートできる体力があれば支えていきたいな。そういう時にまた見返そうと思う。
菜月

菜月