YokoGoto

ブラインド・マッサージのYokoGotoのレビュー・感想・評価

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)
4.0
<ほとばしる感情を、ねっとりとしたカメラワークで表現した100% ロウ・イエ監督の世界>

眼を閉じたら何が見えるか?
それは、五感のうち、視覚という一つの感覚を閉じた状態で、残りの感覚を総動員して感じる想像の世界だ。

しかし私たちは、いつでもその目を開いて、視覚をアクティブにすることができるから、全く見えない人々(視覚障害者)世界を体感はできない。本当の意味で、触覚や、嗅覚、味覚など、他の感覚を視覚の代わりに生きている(視覚障害者の)世界を感じる事は出来ないのだ。

本作、ブラインドマッサージは、そのタイトルどおり、視覚を失った人、いわば盲人の方々が、盲人マッサージ治療院で働く中で起こる群像劇である。

中国を代表する監督、ロウ・イエ監督作品で、2014年の公開当時は、様々な賞を受賞し評判だったものだが、公開劇場が少なくミニシアター系のみでの公開だったため、スクリーンで見逃していた作品。

ソフト化されたら、すぐ観たいと思って待っていたのだが、なかなかTSUTAYAディスカスに登場しなかった。ようやく新作DVDとして出ていたので、早速レンタルで鑑賞。

ロウ・イエ監督の過去作品からも言えるように、この監督の作品というのは、ヒューマンドラマというよりも、感情に語りかける作品が多い。

ドラマとして観るには、若干、難解である。映画のシナリオ、ストーリーを楽しむというよりも、どちらかというと、絵画を観たときの感想に近いかもしれない。理屈や言葉で表すことができないのだが、圧倒される人間の熱量が伝わってきて、見る人の心で投影されていく力を持っている。

私は過去作、「スプリング・フィーバー」、「パリ、ただよう花」「二重生活」の3本を観た経験があるのだが、本作「ブラインド・マッサージ」は、これらの3本と比べると、比較的ドラマ性は分かりやすいかもしれないな、とは思った。


そしてキャストだが、とにかく主役の4人は演技がうまい。うますぎる。
ホアン・シュアン、チン・ハオ、グオ・シャオドン、メイ・ティンは、盲人ではないのだが、言われなければ分からない程である。他のキャストは、皆、視覚障害者だというが、全く違和感なく溶け込んでいる所は素晴らしい。

ロウ・イエ監督が描きたい世界は、あまりにも抽象的で、心で感じ取る映像美であるため、キャストの演じ方一つで、その作品の雰囲気は一変してしまう。それを、微塵も裏切ることなく演じてみせる、メインキャストの4人と、実際の視覚障害者のキャストのみなさん。正直、圧倒されてしまった。

冒頭で、目の見える人たちは、本当の意味で視覚障害者の世界を追体験できないと書いた。
しかし、この映画では、その「見えない世界」にある、私達には想像することもできない、その「色」を突きつけてみせる、芸術作品のようにも感じたのは言うまでもない。

極めて、玄人好きする映画だと思いました。
YokoGoto

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