DieGeschwindi

6才のボクが、大人になるまで。のDieGeschwindiのレビュー・感想・評価

3.8
6歳の少年の成長と家族の変化を描く物語。主要キャストが12年間、一つの家族を演じ続けた作品。

映画は理屈っぽさや観念的なところは全くなく進んでいく。登場人物を演じる俳優たちがリアルタイムに12年間、ただただ年を取る。毎年、同じ俳優たちとスタッフが集まって、その年に起こる出来事を撮影し、本当に12年かけて、12年分のドラマを作りあげた。

人生の一断面を次々と見せる映画であるにもかかわらず、時の流れに支配され、また、「時」そのものでもある人生を鮮やかに浮かびあがらせる。12年の人生の時間が恐ろしい生々しさで結晶していく。人間がひとりひとり、その人だけの人生を生きるということ。そこに今この瞬間だけに存在するかけがえのない時間が流れるということ。そんな時間の奇跡が確かに映し出されている。

日常の描写の積み重ねに過ぎないが、「人生の主役は時間なのだ」という、深い感慨に浸る。画面に映る時間、映らなかった時間、これから流れる時間をも感じ、「今」を愛おしく感じる。瞬間と永遠、美しさと残酷さ、相反する要素を持つ“時間”を見事に融合させている。誠実で新しい映画の誕生。傑作。

『恋人までの距離(ディスタンス)』をはじめとする、“ビフォア”シリーズのリチャード・リンクレイター監督・脚本・製作。