ひげしゃちょー

喰女 クイメのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

喰女 クイメ(2014年製作の映画)
3.7
まず、劇中劇が素晴らしい。役者も去ることながらセットの作り込みが圧巻。 舞台ということもあり市川海老蔵の良さが最大限に引き出されている。按摩の宅悦役を声色まで変えて怪演した伊藤英明も良かった。 基本的に舞台の稽古の劇中劇がメインなんだけどそれと並行して美雪と浩介と莉緒の愛憎劇が現実の物語として展開される。 冒頭、洗濯機の前で美雪が浩介のズボンのポケットをひっくり返して執拗に調べるシーンで既に引き込まれた。 現実と虚構の線引きをあえてしてないのでわかりにくいかもしれないが、よく見るとここから先は現実ではないよと教えてくれるヒントがある。 伊豆に行ってくると嘘をついて莉緒のところからの帰り道に、美雪が表れて首を食い千切られた幻覚を見た後の映像の乱れからラストの楽屋での美雪のシーンまでは、現実ではないとみなしていいんじゃないだろうか。 あれだけ血塗れになった部屋を一晩では綺麗にできないだろうし、誰もいない稽古場で稽古はしないだろう。 劇中で一番痛い描写の自分で堕胎するシーンは妊娠検査薬が陰性だったことから虚構だということで間違いなし。自分で手荒く堕胎した次の日に稽古に来れるほどタフではないはず。 何が現実で何が虚構かは重要ではなく、日常のシーンは全て劇中劇の『真四谷怪談』の身近にとらえてもらうためのツールでしかないのかもしれない。 グロ描写に関しては浩介の首を食い千切られてピューピュー血が噴射するシーンはあるけど生々しさはなく、かといって笑っちゃうほど大袈裟ではなく、適度に作り物っぽくて今までにない感じ。 セックスシーンを含めてもっと生々しくしたらR15+は確実。 PG12ということもありはっきりと見せることはできないから音と血とカメラワークで上手く不気味さを演出していると思う。 『土竜の唄』でもそうだったがかなり際どいラインを攻めている。 そういえばマネージャーのマイコが片足を引きずってるけど三池映画は片足を引きずる演出が多い。『ビジターQ』の内田春菊、『一命』の役所広司、『藁の楯』の山崎努。ぱっと思いつくだけでもこのぐらいある。