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紅い眼鏡のHALのレビュー・感想・評価

紅い眼鏡(1987年製作の映画)
3.7
「残り弾数一発。ただし腹の中だがな」
アニメより戯画的な、学生運動に挫折してしまった若者たちの成れの果てのパロディなんだろうか。でもなんだか肌触りはザラッとしている。

パトレイバーの特車二課と攻殻機動隊の公安9課の合いの子のような設定の「ケルベロス部隊」(= 首都警警備部特機隊)。押井守が繰り返し描いてきた「現代を舞台にした二・二六事件のシミュレーション」「戦争状態への緩やかな移行、または未遂」のひとつの変奏とでもいうべきか。ただ、これは実写作品であり、むしろアニメよりも戯画的な、シュールな雰囲気を帯びている。重装兵のようなプロテクトギアを纏って戦う場面は冒頭の「敗走」だけであり、その後は地下組織と警察機構?の裏切りに翻弄される千葉繁が延々と映される。中盤以降は千葉繁の身体を張ったギャグシーンの乱れ撃ち……というか、川井憲次の音楽が軽快すぎてミュージカル映画とすら言えるかもしれない。その後に描かれるのは立ち食い蕎麦と炬燵である。でもそれって、学生運動の武闘派団体が見た夢なんだろうか。ある意味「脳をハッキングされてしまった学生運動のかつての闘士がみた幻影」のような作品。朧げな幻燈の中で、ラストに現れるタクシー運転手役の大塚康生がいい。

そういやアサルトガールズでも「マグマ大使」が台詞に出てきたけど、押井守はそんなに好きなんだろうか。あと自分にとって近年の押井守は『Fallout 4』で延々とパワードスーツを鹵獲しているおじさんだったので、その執着の(作家としての)端緒をみた思いもした。
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