飛ぶ鳥を落とす勢い

マダム・イン・ニューヨークの飛ぶ鳥を落とす勢いのレビュー・感想・評価

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古風なインドの専業主婦、シャシ。料理上手で、夫や子どもからどんなにワガママを言われても、尽くす、主婦としては完璧な女性だ。しかし、英語も喋れず世間知らずの彼女は、長く連れ添った頭の良い夫と、反抗期の娘に、見下される態度を取られていた。あるとき、NYに住む姪の結婚式の準備のため、シャシだけ3週間早く渡米することに。
ふと入ったカフェで英語が喋れないことで酷い目にあい、劣等感に苛まれた彼女は、英会話を習うことにする。

非常に単純明快、こんな映画は好きだ。インドと日本の家庭はよく似ているなと思った。最近、映画のみならず、芸術作品に共通して必要なことは、自己肯定を描くことだと私は思っている。
彼女は家族のために頑張っていると思っていて、でも家族の誰よりも損をしていると思っていた。きっと。
けれど、4週間の英語の授業、ボーダーレスな環境、そして淡い恋心をつうじて、自分自身が選んだ道なのだ、ということを改めて気付かされたのだと思う。
結婚式での彼女のスピーチは、胸を打つものがあった。
結婚してもしなくても、家族をもっても持たなくても、自分自身を肯定して慎ましく生きている人は美しい。
「恋をしたいんじゃない、尊重されたいだけ」
多くの主婦が、きっと泣いただろうなと思う。いつしか我々は生活を損得で考えるようになり、自分で選んだ道だということを忘れてしまう。けれど、自分に自信を持てば、きっと本当の自分が見える。シャシはその一歩を踏み出せた。そして、生活に返っていった。
彼女の一歩は、家族の思いも変えた。

なんとハートウォーミングな映画。
こういう映画は、べつに悪役が出なくてもよい映画です。
愛とは、尊重され、尊重すること。
本当にそのとおりだと思います。