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マダム・イン・ニューヨークの0のレビュー・感想・評価

2.0
【インド映画100周年】
【アミダーブ・バッチャン70歳を祝して】

家族という一番身近な関係性でも、相手に劣等感を抱かせたり、思いやりや敬う心を忘れたら、大事なものは簡単に壊れる。もちろんそれが家族じゃなくても。一番当たり前で簡単なことだから、簡単に忘れやすい。

良妻賢母を絵に描いたような女性。夫に傅き、夫に傷付くことや尊厳を踏みにじられるような言葉を投げかけられても、耐え忍んできた。しかし、そんな夫を見て育った娘にまでバカにされるようになり、心が限界に近づいて来たところで、新しい世界に飛び込む。英語を学ぶことが目的だけど、自分を大切にすることも学んでいく。そして、ラストは自分に自信を取り戻し、夫と娘にに言いたいことを伝えた。少しの変化だけど、彼女にとっても家族にとっても大きな一歩でとてもいいラストだった。

…とは言え、あの夫はクズ過ぎた。
ラスト、妻が新しく結婚生活を始める2人に向かって訥々とスピーチをし、夫と娘に間接的に胸の内を吐露する。そのスピーチを聞いただけで、まあ、映画だから夫と娘は項垂れて改心したような態度になる。それまでさんざんクズな態度を映し出されていたから、ラスト数分で急に「実はいい奴」みたいな演出をされても全然気分がのれなかった。
あの夫、職業は不明だが仕事ではハグするのが当たり前とか言ってたから、国際的な何かなのだろう。その割に自分の家庭は亭主関白・男尊女卑。お国柄、そういう固定観念や、文化だから、と言われればそうかもしれないが、まあ…それにしてもクズ野郎。朝起きたらおはようの挨拶の前に女房に茶を入れさせ、自分が目を離して息子が怪我をしたのにその場にいなかった妻のせいだと罵り、3週間ぶりに再会した夜は夫婦生活を求め、そこに息子が眠れないといって寝室に入って来たら、子守かよと言ってさっさと寝る。これが、最後のスピーチで改心ってのはちょっとな。途中途中で妻の変化に気づいて、ちょっとずつ態度を改めるシーンがあれば、まだ感情移入できたかもしれないが。

そんなクズ野郎に煩わされることなく映画を見られたのは、とにかく主演女優が可憐。気品があって、上品。仕草、表情、踊らないかと思ったら最後にやっぱり踊ったダンスシーンも可愛い。衣装もとても美しかった。それを着こなす彼女もさらに美しい。

異なる人種、言葉、文化の入り乱れた世界だけど、言葉でコミュニケーションが取れなくても、改札で毎日手を振って挨拶をしたり、フランス人とお互い何を言ってるか分からず話しているシーンとか良かった。

貧しいという言葉では足りない、極貧のインド家庭を扱った作品ばかり見てきたので、この富裕層の生活にはかなりショックだった。インドの貧富の差は凄まじい。
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