高円寺ぱか

マダム・イン・ニューヨークの高円寺ぱかのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

まあ、もう、ほんと、どストレート。でもお客が求めるのは「同じだけどちょっと違うもの」であって、このテーマは常に普遍的に人気がある。そして王道で直球だからといって簡単では決してないのだ。

シーンの配列に意図が行き渡っていて、それが過たずこちらの心に作用するのがたいへん心地よい。シャシは「インド」と「ニューヨーク」の間で揺れるのだけれど、そのテンションのアップダウン、テーマの明確化という意味で、この配列は極めて論理的。

そうした次第なので、どれだけ鈍い客でも「ああこういうことをやりたいのだ!」と読み筋が立てられる。これはマイナスではなく基本プラスの作用であって、なぜなら先が読めないものに対しては期待もできないからだ。そういう意味でたいへん安心して観れて、カタルシスも感じられる。とってもグッド。

シャシは魅力的。最後、ローランを躱すとき、これは惚れるわ…!ってなりました。あとラーダほんといい子。親戚内の女の子のいい方ってこうなるよね。



シャシは伝統菓子ラドゥ作りが趣味の良妻賢母だが、何事にも古式な彼女は英語も不得手。多忙なビジネスマンで家事を軽んじ妻の気持ちに鈍感な夫サティシュ、英語が得意で古風な親を恥ずかしがる娘サプナの間で揺れている。幼い息子サガルも英語ができる。そんな折姉アヌから娘ミーラの結婚式の連絡。式準備の手伝いのため、シャシはNYに1人前入りすることに。泣くほど不安がるシャシを姑は励ます。

飛行機。隣席のユニークな乗客は、映画を同時通訳したり、シャシをあれこれと面倒を見てくれる。別れ際も「決然と!」と助言。姉一家に歓迎される。姪ラーダはマンハッタンを案内してくれ、シャシは満喫するも孤独感を覚える。ラーダが待ち合わせに指定したカフェでいらちの店員に詰められたことがトドメに。街角で泣いていると後ろに並んでいたフランス人がコーヒーをくれる。ラーダが迎えにきたとき、4週間で英語が喋れる英会話教室のバス広告を見つける。

英会話教室に辿り着くと、講師デイヴィッドも生徒も個性豊か。その中にあのフランス人・ローランもいた。ローランはどうやらシャシに気がある様子だが彼女は気づかない。教室で拙い自己紹介を聞いたデイヴィッドはシャシを「起業家」と呼ぶ。電話で聞いたサティシュは鼻で笑う。シャシは英会話教室のことを秘密にした。

Englishの歌。地下鉄もままならなかったシャシは、どんどんNYに慣れていく。英語も熟達していく。ローランと英語でやり取りする帰り道。生徒たちで映画に行き、シャシは英語映画にハマる。ラーダに「judgemental」の意味を聞く。

サプナが電話で再び英語の不得手を詰め、シャシは怒る。ローランにヒンディー語でぶつける。その合間、完璧な英語の注文をこなすシャシを、ローランは褒める。たまには伝わらない会話もいいものだ。2人の距離は接近する。

シャシはだんだん自分の意見を出すようになる。デイヴィッドが彼氏と別れたことを生徒が嘲るのをシャシが嗜める。それを覗いていたデイヴィッドは自由に会話しようという。皆がそれぞれに語るが、ローランはシャシへの思慕を口走る。面前で告白されたシャシは動揺して帰ってしまう。すると家族がいた。サプライズ。

家族でエンパイアステイトビルに登る。ラーダのアシストで抜け出して教室へ。だがその間にサガルが怪我。飛んで帰ったシャシをサティシュは責める。シャシは英語にかまけ本分を忘れていたと自分を責め、英会話教室を辞めるという。翻意を促すラーダは伝言役を頼まれるが、一計を案じる。相変わらず亭主関白の夫に前よりも不満を押し殺すシャシに、ラーダは携帯電話を渡す。ローランが携帯電話で授業を中継してくれるのだ。最終日、テスト(5分間のスピーチ)の日は式当日。生徒たちは口々に絶対来るよう言う。

式当日。美容室の言い訳で抜け出そうとしたシャシだが、サガルの悪戯でラドゥが台無しに。作り直すことに。試験は欠席。だがラーダがデイヴィッドたちを呼んでいた。デイヴィッドたちを紹介するシャシに、サティシュは目を白黒させる。それぞれがスピーチをする中(サティシュがシャシに通訳)、ラーダがシャシを指名。シャシは見事に英語で「夫婦は対等」「家族はjudgementalであってはならない」「家族は愛と敬意を与える」。父と娘は俯く。拍手の中、デイヴィッドは立ち上がり試験の合格を伝える。シャシはラドゥを配る。ローランはフランス語で出会いへの感謝を告げ、シャシはヒンディー語でローランに自分を愛せば古い生活も素敵に見える、自分を愛することを教えてくれてありがとう、と告げる。席に戻ったシャシにサティシュはまだ自分を愛しているか聞く。シャシはラドゥを2つあげ、悪戯っぽく、愛していなかったら2つあげないよ、という。

帰りの飛行機。夫はNYタイムスを頼み、シャシはヒンディー語のものがあるか聞きないと言われる。夫婦は視線を交わし、ニヤリと笑う。